初の大舞台となる今夏の世界陸上で、サニブラウンは得意の200メートル(25日予選)のほか、メダルの期待もかかる400メートルリレー(29日)のアンカーでの出場が予定されている。

「出るだけでは終わりたくない。しっかり得るものは得て帰りたいし、今年いちばんの走りができれば」

 本人もそう意気込む。

 今月に入り山梨県富士吉田市で、初めてシニアの代表合宿に参加した際には、年長の選手に囲まれても「みんな思ったよりルーズで楽。緊張はまったくないです」と話すなど大物ぶりを発揮し、こうも続けた。

「ボルトは憧れプラス目標。いまは勝負にならないが、チャンスがあれば一緒に走ってみたい。(北京で力を発揮できるかは)会場の雰囲気と自分のやる気スイッチが入るか入らないかだと思う。最大の目標は東京五輪でメダルを取ることです」

 まだ線は細いが、187センチの長身を生かした走りは、日本代表に入ってもひと際目立ち、その平均ストライド(歩幅。243センチ)は、2008年北京五輪で400メートルリレー銅メダル獲得の原動力となった朝原宣治の全盛期とほぼ同じとされる。

「小さい頃はサッカーをやっていて、陸上にはまったのは最近のこと」

 もちろん驚異の16歳とはいえ、まだそのポテンシャル(潜在能力)に筋力が追いついていない状況だ。現在の記録(20秒34)を今季の世界ランキングに当てはめても49位と、すぐに頂点をねらえるわけではない。

 それでも、20年東京五輪に向けた日本陸連の強化育成プロジェクト「ダイヤモンドアスリート」にも名を連ね、高校卒業後は海外留学も視野に入れているサニブラウンが順調な成長を遂げれば、将来は日本中を驚かすような記録が出ても不思議ではない。

 来年にはリオデジャネイロ五輪も控えるが、まずは北京での世界陸上がその第一歩となる。

週刊朝日 2015年9月4日号

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