絵本作家五味太郎ごみ・たろう/1945年、東京都生まれ。桑沢デザイン研究所ID科卒業。73年、『みち』(福音館書店)を刊行。以降400冊を超える作品を発表。海外18カ国以上で翻訳・出版されている。『たべたの だあれ』『かくしたの だあれ』(サンケイ児童出版文化賞)、『きんぎょが にげた』、『仔牛の春』(ボローニャ国際絵本原画展)、『みんなうんち』、『言葉図鑑』(世界でもっとも美しい子どもの本展)、『ときどきの少年』(路傍の石文学賞)など著書多数。7月に第50回東燃ゼネラル児童文化賞を受賞(撮影/写真部・大嶋千尋)
絵本作家
五味太郎

ごみ・たろう/1945年、東京都生まれ。桑沢デザイン研究所ID科卒業。73年、『みち』(福音館書店)を刊行。以降400冊を超える作品を発表。海外18カ国以上で翻訳・出版されている。『たべたの だあれ』『かくしたの だあれ』(サンケイ児童出版文化賞)、『きんぎょが にげた』、『仔牛の春』(ボローニャ国際絵本原画展)、『みんなうんち』、『言葉図鑑』(世界でもっとも美しい子どもの本展)、『ときどきの少年』(路傍の石文学賞)など著書多数。7月に第50回東燃ゼネラル児童文化賞を受賞(撮影/写真部・大嶋千尋)
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 世代を超えて愛される絵本作家の五味太郎さん。作家・林真理子さんとの対談で、子どもの読書について持論をこう語った。

*  *  *
 
林:五味さんご自身は、子どものときどんな絵本を読んでたんですか。

五味:絵本なかった。そういう時代じゃなかったから。

林:終戦の年のお生まれですよね。

五味:うん、昭和20年の8月。で、昭和31年ぐらいに福音館が頑張って月刊誌をつくり始めたらしいけど、俺のところにはまだ回ってこなかったよ。本を読むような子どもじゃなかったし。五味太郎っていう本名で絵本を出し始めたら、小学校のときの教師から電話かかってきて、「これ、おまえか。俺は絶対信じねえ」って(笑)。今、子どもに読書させたがる親って多いじゃない。ああいう人たち、作戦を間違ってるよな。

林:あら、そうですか。

五味:本って、ある日突然気になるもんだよ。俺も中学の半ばぐらいに突然手当たり次第に読み始めたね。

林:うちの子、ぜんぜん読まないんです。どうしたらいいですかね。

五味:だいたいいい子だよね、そういう子って。

林:そうでもないですけど(笑)。スマホ命、みたいな感じで。

五味:それいいよね。ずっとそのままかっていうと、そうでもないしね。

林:ずっとやり続ける子も多いみたいですけど。

五味:そうなの? まあ、本を読まなくても他に大事なことっていっぱいあるからね。

林:でも、本をまったく読まない高校生がほとんどだって聞くと、悲しいですよ。子どものころはあんなに絵本が好きだったのに。

五味:小学校1年生、2年生となると、「絵本じゃなくて活字の多いものを読んだら?」って必ず言われるんだよね。「絵本は幼稚だ」って暗に言ってるんだけど、ぜんぜん違うよ。絵を読むってものすごく教養がいるから。大人の読み聞かせって、はっきり言って余計なお世話なのよ。

林:余計なお世話ですか。

五味:子どもは字が読めなくても、色や形を見てるんだよ。それでニッコリしてるんだよ。そのニッコリしてる意味が大人にはわからなくて、文字だけ読んでどんどん次に行く。それである年齢になると「活字を読め」「感想文を書け」ってなる。林さんみたいな専門家に聞きたいけど、感想を文章に置き換えるって、すごく特殊な作業ですよね。

林:そうですね。

五味:子どもは「めんどくせえ」ってなる。遠足行っても、次の日暗いぜ。感想文書かなくちゃならないから。活字離れするような教育してるんだよ。でも放っておいたら活字の世界が気になるようになって、親が読んでる本を読んでみたり……。

週刊朝日  2015年7月31日号より抜粋