宮崎県都農町(つのちょう)にある都農ワインは日向灘を見下ろす小高い丘の上にある。1996年、農業を支援し、地域を活気づけようとできたワイナリーだけに、使うブドウは都農町一帯のものだ。副工場長の赤尾誠二さんが、「都農ワインの心の柱」と語るブドウがある。生食用として地元でなじみ深いキャンベル・アーリーである。世間では「生食用のブドウからは上質なワインはできない」と言われてきた。だが都農ワインでは、地元に愛されるこのブドウでこそおいしいお酒を造りたいと努力を重ねてきた。
そうしたなか赤尾さんらは「発泡酒ならばブドウの甘い香りとさわやかな酸味が、もっと引き立つ」と考えた。高額な設備費用に加え、素朴な地元の人たちに発泡酒は敷居が高いのではという思いもあった。
不安を乗り越えて、2001年にスパークリングワインが完成した。アセロラの香りが溢れる味わいで、ワイン初心者でも飲みやすい。宮崎のみならず日本中の人びとを、虜にする一本だ。
(監修・文/鹿取みゆき)
※週刊朝日 2015年7月3日号