「アクティブ・ラーニング(AL)」。昨年12月、中教審の答申で言及され、高校教育改革の一つとして、注目度が急激にアップした学習方法だ。

 ALを、「過疎化などで生徒集めに苦労する学校の切り札の一つ」ととらえる動きもある。

 大阪府立能勢高校。最寄りの能勢電鉄妙見口駅から田園風景や古民家を眺めながらバスに揺られること約20分。バス停からさらに徒歩約10分で、背後に里山がそびえる同校に着く。

 国際交流にも力を入れ、今年度は文科省からスーパーグローバルハイスクールに指定された同校でも、過疎・少子高齢化の影響は大きい。直近10年で定員割れしなかったのは1年だけ。

 同校では昨年からオンライン予備校「受験サプリ」(リクルートマーケティングパートナーズ)の教育改革実践家の藤原和博さんの受験映像授業を活用し、「よのなか科」の授業を始めたという。

 真鍋政明校長は話す。

「ここは日本が抱える課題の先進地域ともいえます。『よのなか科』は、高校に魅力を持たせ、教育で町おこしをする取り組みのひとつと考えています」

 同校は、04年から能勢町立東中学校・西中学校との連携型中高一貫校となったが、高校進学時に半数以上の生徒が町外の進学校などへ出ていくという。

 こうした現状を変えようと10年、同窓生らが中心となり、「能勢高校を応援する会」を結成。結成総会で藤原さんが講演したのがきっかけとなり、「よのなか科」の授業につながった。

 授業は隔週土曜日。昨年10月にスタートし、これまでに10回開催され、高校生14人、中学生17人が参加した。

 特徴は、授業の進め方にもある。最初に高校生がテーマごとに2時間かけてディスカッションを重ねた後、中高生混成のグループで同じ授業を受ける。このときに高校生は自然に中学生にアドバイスをしたり、リードしたりできるようになるという。

「中高生双方にいい学びの刺激となっています」(真鍋校長)

 参加者の声を聞いてみた。

 
高3の濱田理生(りお)さんは、小学校の先生になるのが夢だ。

「教えることと、『よのなか科』に興味があって参加しました。人に教えることの難しさを実感しました」

 と話す。印象に残っているテーマは、「ケータイ/スマホとどう付き合うか?」。

「使用時間の最長は1日8時間、平均5時間。僕自身、1日3時間ほど使っていて、一年で莫大な時間になるので、時間を有効に使おうと思いました」(濱田さん)

 高1の小林航大さんと池田佳菜子さんがともに印象に残ったテーマは「制服問題をディベートする」。

 小林さんは制服派、池田さんは私服派。身近な問題で、お互いに意見を述べ合うのが楽しかったという。

「毎回、決まった答えがない問題について考え、いろいろな考え方があることがわかって良かった。最初は少し恥ずかしかったけれど、だんだん発言に抵抗感がなくなり、自分と他人の意見をまとめられるようになりました」(小林さん)

「今年も『よのなか科』を受け、昨年自分がしてもらったように、中学生にアドバイスしたい」(池田さん)

 二人とも、参加後は能勢高校へ進学したいという思いが強くなったという。

 授業を見た真鍋校長は、

「ALは大学入試で大きな武器になりますし、就職後も役立つはずです」

 と手ごたえを話す。

「『よのなか科』を本校の魅力として打ち出したい」

 大都市校にも地方校にも登場してきたアクティブ・ラーニング。生徒集めの切り札として、今後どこまで広がりをみせるだろうか。

週刊朝日 2015年5月29日号より抜粋