ある日突然がんを宣告されたときより、もっとつらいといわれる「再発」の告知。死の恐怖を突きつけられながらも“ここからが本当の闘病の始まり”と、力強く歩み始める人たちがいる。ジャーナリストの鳥越俊太郎さん(75)もその一人だ。
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僕が大腸がんを患ったのは05年。腺がんというタイプで、都内の病院で大腸内視鏡検査を受けていると、内視鏡のモニターにがんが映っていた。つまり医師に告知される前に、がんを知ってしまった。その後、肺や肝臓への転移がわかり、結果4回手術しました。最後が09年で、今年で6年です。
がんって、なったことのない人間じゃないと気持ちはわからない。そういう意味で僕ががんになったとき、「患者・鳥越」よりも「取材者・鳥越」が勝っていたと思います。
記者時代から「特ダネを書きたい」という気持ちが強く、常に異常な境遇に置かれることを待ち望んでいるところがあった。がんがわかったときは絶好のチャンスだと。すべて見てやろうと思ったんです。もう職業病としか言いようがない(笑)。知り合いのディレクターに、「僕がくたばってしまうところまで撮って」と頼んでいます。