社会人となって日々の生活に重くのしかかる日本の奨学金制度。貧困の一要素になってしまうケースもある。しかし、そんな状況が新たな奨学金制度で変わりつつあるという。

「今、もっとも注目すべき奨学金は、大学独自の制度です」

 奨学金アドバイザーで『奨学金 借りる? 借りない? 見極めガイド』などの著書がある久米忠史さんがそう説明する。

 国の奨学金業務を行う日本学生支援機構の調査によると、大学など学校独自の奨学金は2007年度には2582だったが、10年度では6363と約2.5倍に増えていた。しかも、

「10年度の学校独自の奨学金の77.6%が、返済しなくていい『給付型』なのです」(久米さん)

 日本の大学生の約半数が奨学金を利用しているが、この約9割を占めるのが、公的な日本学生支援機構のもの。無利子と有利子の奨学金があるが、どちらも返済が必要な「貸与型」で、つまりは“借金”だ。このため、大学卒業後の奨学金返還の滞納が大きな問題になっている。

 だが、これは日本に、国が関与する給付型の奨学金制度がないことが原因だ。

「数年前に韓国が給付型奨学金を創設したため、OECD加盟国で国としての給付型奨学金制度がないのは、そもそも学費が無料のアイスランドと、日本だけになりました」(同)

 一方、大学独自の給付型の奨学金が増えている背景には、少子化のなかで生き残りを図る大学が、他大学と差別化して、優秀な学生を集めたい事情がある。

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