ここ最近、不調にあえぐプロゴルファー・石川遼選手へ、同じプロゴルファーの丸山茂樹氏がアドバイスを送った。
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遼が苦しんでますね。
米PGAツアーの「バルスパー選手権」(3月12~15日、米フロリダ州・イニスブルック・リゾート)で、日本勢で唯一出場した石川遼(23)が予選落ち。これで今シーズンは10試合に出て5度の予選落ち。最高が19位となっています。
僕のチェックしている限り、遼のミスには傾向があるように思います。
例えば1番ホールでティーショットが左に引っかかると、2番はプッシュアウトして右。3番は左、4番はプッシュ……。左へ右へ、交互にフェアウェーを外していく。
思うに、ダウンスイングのときに、いろいろ考えちゃってるんでしょう。スイングに迷いがあって、その場に応じてごまかそうとしてるからこそ、うまくいってないんじゃないかな。
スイングへの迷いが相当あるから、ティーショットやセカンドショットのことで頭がいっぱいになって、コースマネジメントがおろそかになる。拾っていかなきゃならないアプローチにも、気持ちが乗っていかない状態なんでしょう。
遼は米ツアーに本格参戦して3シーズン目です。ある意味慣れてきた一方で、いろんな選手とラウンドして、「なんでこんなにうまい選手がいっぱいいるんだろ?」という自己嫌悪にも陥ってるんでしょう。
というのも、遼はとてつもなく高いステージを狙ってるからなんです。米ツアーに参戦していたころの僕なんかより、ずっとずっと高いところを。
周りに比べて体力で劣るし、飛距離も出ない。それならアプローチとパターと根性でしのいでいくしかねえな、と。そんなことを続けてきたから、8シーズンやそこらでもう、疲れちゃったんでしょうね。自分自身で。「ゲリラ戦をやりすぎたから、私は特殊部隊を引退します」ってね。ハハハハ。
僕が目指したゲリラ戦なんかじゃなく、遼は米ツアーの王道で勝負しようとしてる。常にキャリーで280、290ヤードを狙ってるから、46.25インチなんて長尺のドライバーを使う。でもね、10ヤード余計に飛ぶよりも、10ヤード曲がらない方がいいんです。日本ツアーでよかったころの長さに戻してみたらどうなのかな? ここは、逆戻りしてみるのも一つの手じゃないかと思うんです。
言ってみれば、「カッコよくプレーする石川遼」と「姑息(こそく)な手段を使っても難局を乗り切る石川遼」をうまく使い分けられるようになったらいいんじゃないかなあ。
遼はいま、いろんなことで頭が混乱して、誰にも相談できずに自分を追い込んじゃってる気がします。
※週刊朝日 2015年4月3日号