BOSSA'68/ALFONSO CARLOS SANTISTEBAN
BOSSA'68/ALFONSO CARLOS SANTISTEBAN

BOSSA'68/ALFONSO CARLOS SANTISTEBAN

 ジャズサンバの成り立ちについては深く言及しない。「スタン・ゲッツ/ジャズサンバ」がアメリカで大ヒットし”ジャズサンバ”がある種のジャズの一潮流として定着し、バークリー音楽院でマナーを学習した渡辺貞夫さんが帰国後にタクト・レコードから「ジャズ・アンド・ボッサ」を発表し日本でもブラジル音楽とジャズの出会いである”ジャズサンバ”が広く認知されたこともよく知られた話である。

 同時期にはブラジルからアメリカから多数のミュージシャンが欧州に移り住み、サンバあるいはボサノヴァはその親しみ易いメロディや静かに囁くようなボーカルスタイルなども相まってすぐに映画音楽やTVなどにも進出しポピュリズムを獲得してゆく。

 60年代後半の欧州ジャズアルバムにはブラジル音楽やタンゴ、マンボなどのラテンのリズムがモチーフに使われた曲が収録されることも少なくありません。バップやクールスタイルなどの4ビートから黒人音楽本来の精神性に極端に向かう、ないしはフリージャズに傾倒していく、あるいはラテンのリズムでの中でモダンスケールを追求するといったような、後の新主流派への過渡期としてその60年代後半というのはある側面そういった転換期だったようにも思えます。

 本作はスペインのピアニスト/コンポーザーとして主に映画音楽やTV番組用の音楽制作に数多くの足跡を残したアルフォンソ・カルロス・サンティスティバンのリーダー作品。ギターやスモールパーカッションを加えた(Vo.入りの曲もあり)6TET構成ですが、録音状況の特性なのかシンバルレガートの推しの強さがまず耳に飛び込んでくる。ま、これは我々DJ脳特有の聴き方になるのですが、例えピアニストのリーダー作品でも基本はリズム設定から!ですから困ったものです。サックス、フルート共にオブリガート程度に控えあくまで”ピアノを聴かせる”ことをアレンジの中心に据える指向はジャズマナーに即していて安心できます。でもそのピアノのソロさえもあらかじめ作曲されているんじゃなかろうかという着地の良さや短尺で的確な各パートのソロなどに映画音楽作家の片鱗が伺えるかと思います。さらにはブラジルのそれの情熱とはまた違うメランコリックな欧州ジャズサンバの魅力がたっぷり詰まっていてどんな現場でもプレイしていて反応も上々。同じジャケットの7インチもありますがこれは是非アルバムを探して頂きたい。