歴代最多33回目の優勝を果たした横綱・白鵬が場所後に審判を批判した問題についてプロゴルファーの丸山茂樹氏はこう語る。

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 先日、青木功さん(72)のプロ生活50周年記念スペシャル番組がオンエアされました。僕と石川遼(23)がゲストとして、青木さんと一緒にプレーしたり、語ったりさせていただきました。ご覧いただけましたか?

 この番組の中で、1980年の全米オープンの映像が流れました。ニュージャージー州バルタスロールGCで、当時37歳の青木さんが40歳の「帝王」ジャック・ニクラウスを追い詰めた「バルタスロールの死闘」です。懐かしかったし、いまでも強烈なインパクトがありましたねえ。

 二人は4日間とも同組で回るんです。3日目を終えて6アンダーで並んだ。10歳だった僕も、日本でテレビにかじりつきましたよ。あのニクラウスと争うなんて、「日本人にもこんなことができるんだー」って興奮してね。

 最終日、アウトの9ホールで青木さんは2打差をつけられた。インに入ると、お互い譲らない。ニクラウスが6アンダー、青木さんが4アンダーで、17、18番はお互いに連続バーディー。日本選手初のメジャー制覇には届きませんでしたけど、僕は帝王相手に戦い抜いた青木さんの姿を、目に焼き付けました。

 青木さんは18番の3打目を1メートルにつけるんですけど、ニクラウスが7メートルのパットを先に決めて優勝。すると興奮したファンがグリーン上になだれ込んできたんです。まだ青木さんのパットが残ってるのに。

 歓喜のあと、ニクラウスが手でファンを制します。これもカッコいい。まだざわつく雰囲気の中、青木さんがコツンとバーディーパットを入れた。このパットが青木さんらしくてね。何事にも動じないずぶとさ。すごいですよね。

 久々に一緒にプレーもさせてもらいましたけど、とにかく型にはまらないプレーヤーですよね。すごく個性にあふれた「青木功ワールド」を、改めて体感しました。最近は個性のない選手が多いじゃないですか。僕は青木さんやジャンボ(尾崎将司)さん、中嶋常幸さんたちを見ながら育ってきましたからね。個性が服を着て歩いているような。だからイマジネーション豊かなゴルフをする人は、やっぱり好きですね。

 話は変わって、大相撲の「白鵬騒動」です。初場所で史上最多33度目の優勝を達成した横綱白鵬(29)の言葉が、ちょっとした波紋を起こしました。

 千秋楽の翌日の記者会見で、まさかの審判批判ですからね。白鵬は自分から「疑惑の相撲が一つある」なんて切り出して、13日目に同体で取り直しの末に勝った大関稀勢の里戦に触れたんですって。最初の一番で確実に勝ってた、と。「子どもが見ても分かるような相撲」「ビデオ判定の方は何をしたのか。もう少し緊張感を持ってやってもらいたい」「肌の色は関係ないんですよ」とまで。

 心のどこかに、「自分は外国人力士だから」って思いがあるんですかねえ。僕の想像ですけど、劣等感やハンディみたいなものを背負ってるのかもしれません。僕もアメリカでプレーしていた時期に、いろんなことを感じましたからね。僕がもっと英語を話せたら、言いたいこともいっぱいあったなあ。

週刊朝日 2015年2月13日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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