これから先も日本人はイスラム国の標的となるのか。
『外事警察』(NHK出版)の著者で作家の麻生幾氏は、日本国内にまで危険が及ぶ可能性を懸念する。
「不気味なことがある。あまりのタイミングの悪さだ。人質事件の発生後、安倍晋三首相はイスラエルの地で反テロ宣言をせざるを得なかった。今後、イスラム国や多くのイスラム過激派が、日本を“主敵”と誤解する危険性がある。来年、サミットを開催する日本では、国内の重要防護施設や国外の権益(公館、企業)へのテロの脅威が現実化する。気になるのは、イスラム国が化学兵器を保有している可能性があることだ」
はたして、遠い日本に狙いを定めるほど、イスラム国は先鋭的な組織なのか。
日本女子大の臼杵陽教授(中東現代史)は情勢をこう分析する。
「イスラム国の攻撃対象は、自分たちの陣地に入ってくる敵国の人間です。外に出ていくテロは起こしていない。しかし、パリの新聞社が襲撃されたように、イスラム国から分裂したアルカイダ系の組織は、グローバルなテロを進行中で、日本の出方次第では彼らが動く可能性はある」
前出の麻生氏は、最悪の事態が起こるかもしれない背景をこう語った。
「日本国内には、『イスラム国やイスラム過激派のネットワークはない』と言われている。しかし、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の直後、アルカイダのエンハーベスト(日本円調達担当者)が日本国内のネットワークを活用し、数億円を調達したことをドイツ連邦情報局が把握した。原発や国家石油備蓄基地を多数抱え、潜在的にテロに脆弱である日本では、『ネットワークは見えていないだけ』という覚悟が必要だろう」
現在、イスラム国に拘束されている2人の日本人の画像を加工したコラージュ画像が多数、ツイッター上に投稿され、拡散。それらの多くは、2人の日本人とイスラム国の兵士の顔を差し替えたり、アニメのキャラクターをちりばめたりする日本人によるいたずらの類だ。
画像はインターネットを通してアラブ諸国にも届き、対立感情をあおっているという。中東の混迷はもはや対岸の火事ではない。
(本誌取材班=古田真梨子、原山擁平、福田雄一、横山 健、小倉宏弥)
※週刊朝日 2015年2月6日号より抜粋