推定約30万人の罹患者がいる「慢性疲労症候群」。不調がずっと続き、重度の場合は休職せざるを得なかったり、寝たきりになることも。大阪府在住の主婦、三原恵子さん(仮名・52歳)もそのひとり。症状に合わせ、さまざまな薬を処方してもらったが、一進一退を繰り返し10年が経過。症状は悪化していた。
そんなとき、知人からの情報で疲労専門のナカトミファティーグケアクリニックのことを知り、2014年の春に受診した。
「三原さんは、症状が少し改善しても再発を繰り返し、悩んでいました。問診により、それまで効果のあった薬を調整しながら治療を継続するとともに、リハビリテーションの指導をしました」
そう話すのは、同クリニック院長の中富康仁医師だ。
「三原さんの場合は、回復過程で、少し体調が戻ると、たまった家事を一気に片付けて、また次の日から寝込んでしまうことを繰り返していました。それで筋力や体力が徐々に落ちて、睡眠の質も悪くなり脳機能が回復しないのです。そこで、少し回復したら、家の中で軽いストレッチをし、次は家の周りを歩く、階段の昇降をするなど、少しずつ適度な活動と運動を心がけてもらいました」(中富医師)
治療から約半年過ぎた三原さんは、少しずつ起きていられる日が増えた。定期的に通院も続けている。
「慢性疲労症候群の人は、数年以上診断が特定されないことも多く、適切な治療がされない期間が長くなればなるほど、治りにくくなります。診断基準では、6カ月症状が持続した場合とありますが、当院ではもっと早い時期に受診された方でも、明らかに他の基準を満たしていれば治療に入るケースがあります」(同)
しかし、現状では慢性疲労症候群を治療する病院・医師はきわめて少ない。さまざまな科に横断的に関わる症状が現れ、総合的に診察しにくいためだ。
「一般の内科での検査で、甲状腺機能低下症や糖尿病、心不全といった他の病気を除外してもらい、異常が見つからなければ、症状をもとに治療を受けることが重要です。当院では、疲労関連の検査である、疲労度計、酸化ストレス検査、睡眠時活動度検査、心理検査などを受けてもらいます」(同)
症状や検査の結果により、西洋薬、漢方薬、サプリメントなどを適宜組み合わせて治療する。三原さんのようなリハビリテーションも大事だという。
日頃から自分の疲れの感覚を研ぎすますことも大切だという。
「現代人は、いろいろなストレスを抱えながら、疲れの感覚を押し殺して生活しています。でもそのまま放置すると、疲れの感覚が麻痺してしまいます。疲れの感覚を大事にして、睡眠をとっても回復しないとかストレスから逃れても治らないという段階は危険信号だと思って、近くの医師でもいいので受診しましょう」
と、中富医師はアドバイスしている。
※週刊朝日 2015年1月30日号より抜粋