親子3世代が集う正月。時間もたっぷりあるし、楽しくて、孫にも自分にもプラスになる“遊び”をしてみてはどうだろうか。脳科学の専門家に聞いたオススメをご紹介する。
脳科学の立場からみて、祖父母が孫と一緒に遊ぶことは、両者にとってさまざまなメリットがあるようだ。テレビ番組などで脳トレの監修を手がける諏訪東京理科大学(長野県茅野市)共通教育センター教授、篠原菊紀さん(54)は言う。
「シニア世代が孫と遊べば脳の活性化につながり、孫にとっても両親や友達とは違う関わり方をするので豊かな人間性がはぐくめる。たっぷり時間がある正月は、いろんな遊びを経験できる絶好の機会です」
科学的にはどんな遊びがよいのだろうか。
「外なら鬼ごっこやボール遊びなど、体を大きく動かすような遊びがいいです。正月なら凧揚げや羽根つきがオススメです」(篠原さん)
最近、運動やダンスなどがボケ防止につながると指摘されている。米国イリノイ大の研究も、体を動かすと記憶をつくりだす「海馬」の機能低下が抑えられ、早歩きをすると海馬の容積が増えると報告されている。
体をたくさん動かす遊びは孫にも有益だ。篠原さんによると、小学校2年生ぐらいまでによく体を動かした子どもは我慢ができるほか、落ち着きが出て情緒面で安定しやすいとの報告があるという。
「家の中なら楽しみながら脳トレを。しりとりやあたまとり、あるいは『Nバック課題』などはいかがでしょう」(同)
あたまとりとは、しりとりの反対で、「きつね→もちつき→すもも→うぐいす……」というように、次に続ける単語の最後に、前の単語の頭文字をつけるというもの。初めは難しく感じるが、慣れると案外楽しい。
「Nバック課題」とは出題者と解答者が交代に数字を言い合うゲームだ。その際、解答者は出題者のN個前(Nバック)の数字を言わなければならない。
例えば「1バック課題」の場合、出題者が「2→5」と言えば解答者は「2」と答えるのが正解。続いての数字が「6」ならば「5」(2→5→6なので1つ前で5になる)が正解となる。
「Nバックではおじいさんやおばあさんが問題を出し、お孫さんが答えるという方法がベスト。問題を出すほうもそれなりに頭を使わなければならないので、かなり脳が活性化すると思います」(同)
記憶力を鍛える効果を期待するなら、トランプの神経衰弱が思い浮かぶだろう。だが、篠原さんは意外にも「あまりすすめられない」と言う。
「5、6歳ぐらいの短期記憶は、生涯の中でもっとも優れている時期。そんな子どもとシニア世代が対等に戦っても勝てる見込みはほとんどありません。するとゲーム性が損なわれ、お互いにおもしろくない結果になりかねないんです」(同)
※週刊朝日 2015年1月2―9日号より抜粋