安倍政権が「カジノ解禁法」を推し進めるなか、今年8月、厚生労働省の研究班が、国内でギャンブル依存症(病的賭博[とばく])に関する調査結果を示した。依存の疑いのある人は536万人で、内訳は男性438万人、女性98万人。成人全体の4.8%で、男性に限ると8.7%に膨れ上がる。さらに、うち約8割を占めるとされるのが「パチンコ・パチスロ依存症」だ。
こうした現状に、パチンコ業界もギャンブル依存対策に乗り出した。
「今年度内をメドにホールの従業員教育のためのガイドラインを作成します。まず従業員がパチンコ依存症について認知し、接客に生かせるようにしたい。遊技機のシステムも射幸心を抑える方向に変えていくことを現在検討しています」(「日本遊技関連事業協会」の篠原弘志専務理事)
業界団体が運営を支援する相談機関「リカバリーサポート・ネットワーク」では、パチンコ・パチスロ依存に悩む人やその家族を対象に、無料で電話相談を実施している(通話料は自己負担)。
1500万円もの借金を抱えて家庭が壊れてしまった元依存症のAさんは本人の自覚が肝心だと釘を刺す。
「どんな対策をとられても、依存のまっただ中にいる人には響かない。医療を始め、さまざまな介入や手助けはもちろん必要だが、結局は本人が現実を受け入れて、少しずつ自分のなかで“気づき”を積み重ねていくしかないと思います」
25年間にわたって依存症治療にあたる大石クリニック(横浜市)の院長、大石雅之医師が言う。
「ギャンブル依存症による経済的損失はかなりのもの。失職者の増加による生活保護費、離婚による母子家庭への助成など、自治体はギャンブル依存症による弊害をしっかり認識し、対策強化に乗り出すべきでしょう」
首相が目玉と位置づけ、自ら旗を振るカジノ解禁法案。ギャンブル依存症対策を巡る議論が十分に深まっているとは言い難いなかで、閣僚のダブル辞任に伴い、今国会での法案成立は厳しいとの見方が与党内で広がっている。
※ 週刊朝日 2014年11月21日号より抜粋