要素の引き算で機能を際立たせた壁掛け時計秒針は運針をスムーズにするために先端にシッポのような重りをつけるのが通例だが、この時計は見やすさを最優先するために直線。たわみをなくすため、従来のアルミニウム製ではなく業界初のマグネシウム製を採用。こまやかな感性が随所に生かされた逸品(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
要素の引き算で機能を際立たせた壁掛け時計
秒針は運針をスムーズにするために先端にシッポのような重りをつけるのが通例だが、この時計は見やすさを最優先するために直線。たわみをなくすため、従来のアルミニウム製ではなく業界初のマグネシウム製を採用。こまやかな感性が随所に生かされた逸品(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
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針の角にわずかな丸み(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
針の角にわずかな丸み(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
掛ける位置で選べる3サイズ(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
掛ける位置で選べる3サイズ(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)

 週刊朝日で好評連載中の「美意識ある生活」。生活品評論家の東海左由留(とうかい・さゆる)さんが厳選したひと品を紹介している。東海さんは日本とヨーロッパで「生活をより豊かに」をテーマに様々なアイテムやサービス、ライフスタイルを取材。自腹で購入し、時間をかけて使用感を検証している。

【美意識ある生活 他の逸品はこちら】

 今回は、壁掛け時計を紹介する。

*  *  *

■足し算より、引き算

 技術は進歩を続け、どの製品も便利な機能に置き換えられていく。壁掛け時計も電波時計ならば標準電波を受信して誤差を自動修正。あの面倒な高い位置での時刻合わせから解放された。

 ところが、人間の感性は技術の進歩とは別物。デザインが今ひとつだと違和感を覚える。頻繁に見る掛け時計だとなおさらだ。そんなわけで、わが家には13年ほど壁掛け時計がなかったが、ようやく納得できるものを見つけた。それがセイコーのパワーデザインプロジェクトのスタンダードアナログクロック。

 文字盤の目盛りは線だけの棒略字。一見、数字がベストに思えるが、数字の形・大きさ・配置とデザイン要素の足し算が増えるほど読み取りやすさは落ちる。しかしこの時計、不思議に無機質でないのは、目盛りは肉盛り印刷で立体的な丸みがあり、針や目盛りの角にわずかな丸みがつけられているから。この統一感が見やすさと心地よい見た目の両方を実現させた。感服。

<今日の逸品>
SEIKOパワーデザインプロジェクト スタンダードアナログクロック
黒枠 KX308K(直径31cm)3万円、KX309K(直径26.5cm)2万8000円、KX310K(直径20cm)2万5000円
白枠 KX308W(直径31cm)3万円、KX309W(直径26.5cm)2万8000円、KX310W(直径20cm)2万5000円 すべて税別
問い合わせ先:セイコークロックお客様相談室

※SEIKOパワーデザインプロジェクト スタンダードアナログクロックを購入する

週刊朝日 2014年8月29日号