競馬ファンには、まさかの落とし穴である。競馬で得た所得を申告せず、約5億7千万円を脱税したとして、大阪市の元会社員の男性(39)が所得税法違反の罪に問われている裁判の論告求刑公判が7日、大阪地裁で開かれた。

 起訴状によれば、男性は2007年から09年の3年間で、約28億7千万円分(!)の馬券を購入し、約30億円の払戻金を取得、約1億4千万円分の利益を得たという。ところが、この払戻金を申告しなかったことに加え、ハズレ馬券の購入費が経費として認められなかった結果、利益より巨額の脱税額になったのだ。

「男性は、すべての購入記録などのデータをパソコンに残していた。そこからすべてが解明され、悪質な脱税だと判断した。反対に記録がなければ、捜査は行き詰まっていたでしょうね」(捜査関係者)

 争点となっているのが、前述したハズレ馬券の扱いだ。検察側は馬券購入費のうち、ハズレ馬券分の約27億4千万円は「経費」と認められず、的中馬券の購入費だけが経費として認められると主張している。

 一方、男性側は、ハズレ馬券も利益を得るために必要な経費だったと反論する。男性の弁護士が訴える。「競馬に勝った時、納税や申告が必要であることを、日本中央競馬会も周知せず、課税が行われてこなかったのが実態。男性はスケープゴートにされている」。

 男性は刑事事件に問われていることを理由に、勤務していた会社を退職に追い込まれたという。検察側の求刑は懲役1年。判決は5月23日に言い渡される予定だ。

週刊朝日 2013年2月22日号