週刊朝日2014年10月24日号 表紙の熊川哲也さん
週刊朝日2014年10月24日号 表紙の熊川哲也さん
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 日本を代表するバレエ団・Kバレエカンパニーが15周年を迎えた。そのトップであり「芸術監督」の川哲也に迫った。

 タン、タン、タターン──。

 熱気のこもるバレエスタジオに、熊川哲也のリズムを刻む声が響く。ダンサーたちの位置を、腕のほんの少しの角度を、音楽の抑揚を、突き詰めていく。

 今秋の15周年記念公演は、熊川の演出、振付による「カルメン」。古典作品を一通りやりつくしたからこそ「次の領域」に挑んだ。公演前のリハーサルでは、芸術監督としての顔があった。ダンサーを見る目には、こんな「哲学」がある。

「場合によっては、実力は十分だが華が足りないダンサーには称号を与え、カリスマ性や人気はあるが実力がまだ追いついていないダンサーには称号ではなく舞台を増やす。育成にはそういう方法もあります。ビジネスなので、チケットが売れるキャスティングを考えますが、そこで整合性をとらないと、僕の審美学が崩れます。お客さんともスタッフとも、信頼の欠落になるでしょう」

 経営者として、年間約50公演を行い、全国5カ所にスクールも持つカンパニーへと成長させた。現在42歳、ダンサーとしても、

「長いこと幸せな舞踊生活ができています。それに伴う嫉妬とも僕は隣り合わせで生きている」

 バレエを始めて30余年を「やめようと思わないから、続けている感覚がない」と言い切る。肉体の時間との闘いはあるが、

「体力があるうちに、表現者としての内面のアピールが充実するのがベストですが、時として肉体が衰えた後に、犠牲を払ったがゆえに得る内面的な表現力が入れ替わる場合もあります。でも、その時にもう体力がついていかないのは、切ないこと。僕はいま、幸いにも肉体と精神が相重なっている時期だと思いますから、この状態でできるだけ長く、自分が納得する舞台を続けることができればいいですね」

週刊朝日  2014年10月24日号

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