ドラマ評論家の成馬零一氏が、10月から新作が始まる『仮面ライダー』シリーズをテーマに筆をとった。
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石ノ森章太郎の原作漫画をもとに、子ども向け特撮ドラマとして1971年に放送された『仮面ライダー』は、形を変えて今も続いているドル箱シリーズだ。
今では昭和ライダーと言われるシリーズは、藤岡弘が主演を務めた第1作以降、1988~89年に放送された『仮面ライダーBLACK RX』まで10作。その後、TVシリーズは休止していたが、2000年の『仮面ライダークウガ』から平成ライダーと呼ばれる現在のシリーズがスタートし、『仮面ライダー鎧武』まで15作が作られている。
テレビ朝日系の日曜の朝は戦隊ヒーローモノと仮面ライダーが看板特撮番組となっていて、その人気は一向に衰える気配はない。近年、『ウルトラマン』や『ゴジラ』など、親子で楽しめるリバイバル作品が全盛だが、『仮面ライダー』が異色なのは、毎年新作が作られ、常に現役であり続けていることだ。
『仮面ライダー』の魅力は大きく分けて二つ。一つは、1年かけて放送される長編群像劇としての面白さ。
おそらく多くの方々にとって『仮面ライダー』は昭和ライダーの、悪の組織ショッカーの怪人とライダーが戦う勧善懲悪のヒーローモノというイメージだろう。しかし平成ライダーは、ストーリーが毎回複雑で、アクションがドラマの中心にあるため、人間の死も容赦なく描かれる。
例えば、『仮面ライダー龍騎』では13人の仮面ライダーが自らの望みを叶えるために戦うのだが、敵も味方もライダーで、単純な善悪の物語を大きく逸脱したものとなった。
他にもタイムトラベルを題材にした『仮面ライダー電王』や、学園青春ドラマ調の『仮面ライダーフォーゼ』など、常に様々なアイデアが盛り込まれている。先日まで放送されていた『仮面ライダー鎧武』では、脚本家に『魔法少女まどか☆マギカ』でアニメファンから絶大な支持を受けている虚淵玄を起用。戦国武将とフルーツがモチーフのライダーという無茶苦茶な設定が、当初はどうなるかと思われたが、閉鎖された街の中でめまぐるしく状況が変わっていく物語は、3.11以降の混乱が刻印されていた。こういったハードSFアクションを1年にわたって放送できるのは『仮面ライダー』だけだ。
もう一つの特徴は、若手新人俳優の登竜門となっていること。00年代にはオダギリジョー、水嶋ヒロ、佐藤健、瀬戸康史が主演を務め、近年では桐山漣、菅田将暉、福士蒼汰といった若手イケメン俳優がライダーから羽ばたいている。また、平成ライダーは群像劇が多いため、要潤や綾野剛のように脇役だった俳優が後にブレイクすることも多い。
主演を務める俳優は演技経験のない新人が務めることがほとんどだが、1年間かけてじっくりと演技をするので、みるみる芝居が上達していく。そんな俳優の成長を追いかけるのもまた作品の面白さとなっており、言うなれば、男性俳優の“朝ドラ”みたいな役割を果たしているのだ。
おそらく『仮面ライダー鎧武』で主演を務めた佐野岳、小林豊、高杉真宙も今後、どんどんドラマや映画で活躍することだろう。
10月5日から放送される最新作『仮面ライダードライブ』は刑事ドラマテイストで、主人公がバイクではなく自動車に乗ることが話題となっている。主演を務める竹内涼真がこの1年でどう役者として成長するのか、楽しみだ。
※週刊朝日 2014年10月10日号