長野県伊那市にあるクリーニング店3代目店主の“洗濯王子”こと洗濯アドバイザーの中村祐一さん(30)は都内で洗濯教室を開くほか、インターネットで洗濯の悩みに答えている。
「料理教室はあっても洗濯教室はないですね。意外とみなさん、洗濯の基本を知らないと感じます」
そんな中村さんにこの時期寄せられる相談で、最も多いのが、“汗ジミ”と“におい”だ。例えば柔軟剤の香りと汗臭さが入り交じって嫌なにおいを発してしまった、というケースも。
「最近、香り付きの洗剤や柔軟剤がブームとあって、においに敏感になっている気がします」
私たちの汗は基本、無臭だ。それがなぜ衣類につくと臭くなったり、シミができたりするのか。
「それは雑菌のにおい。汗を吸い取った衣類には雑菌が繁殖しやすく、そこから汗臭さや雑巾のような異臭を放つんです」
汗ジミや黄ばみの原因は「酸化」だ。リンゴの皮をむいて放っておくと茶色くなるのと同じで、柄ものや色付きの衣類でも本来の色さえ変えてしまう。だから、この夏によく着たシャツやTシャツほどにおいが定着し、汗ジミや黄ばみができているはずだ。何とかできないか?
「大丈夫です。家庭の洗濯でも白くなりますよ。においもとれます!」
と、中村さんはキッパリ言う。
「ただしコツがあります。お湯を使い、時間をかけて、上手に漂白剤を使うのがポイント」
洗濯に使う水をお湯に変えることで洗剤がよくなじみ、汚れが溶けやすくなる。さらに時間をかけると洗剤をしっかり汚れに作用させられるという。
中村さんによると、通常は40度ぐらいのお湯に20分ほど漬け置きすればOK。少しガンコな黄ばみや汗ジミなら50度ぐらいで、1時間ほどかけたい。
洗えるものは綿や麻、化繊など。絹やおしゃれ着はクリーニングに出したほうがよいそうだ。
記者は以前、洗濯ものの汗臭さを落とすために熱湯で漬け置きし、衣類を縮ませた。それを中村さんに明かすと軽く叱られた。
「温度が高すぎです。そこまで上げなくても十分に汚れは取れる。むしろ変色させたり衣類を傷めたりしますから二度とやらないで」
漬け置きで使う洗剤はいつもの液体洗剤でOKだが、規定量を守ること。濃度が濃いほうが汚れは落ちるが、濃すぎると衣類を傷め、すすぎ残しが出やすい。だが、強烈なにおいや変色を解決したいときは、やはり洗浄力に優れる固形の洗濯石けんや粉末の洗剤を使ったほうがいいという。
漂白剤には単に白くするだけでなく、除菌や消臭効果もある。洗濯で使うものは「酸素系漂白剤」といい、色柄の衣類にも使える。
柔軟剤は冒頭のように変なにおいがつくこともあるので要注意。また過剰な柔軟剤は汚れと同様、「落とすもの」の対象になる。つまり柔軟剤が多く付着すると、本来の汚れが落ちにくくなるわけだ。
「汚れが落ちていない衣類に柔軟剤を使うのは、掃除をしていない部屋にアロマで香りをつけるようなもの。汗臭さなどをしっかり落としたうえで、香りを楽しんでください」(中村さん)
※週刊朝日 2014年9月19日号より抜粋