最近、子育てならぬ「孫育て」が一般化しつつあるという。共働き世帯の増加に伴い、孫の世話は当然という時代がやってきたというのだ。しかし時間や体力、お金を奪われたり、育児の常識の変化に戸惑ったり、“孫疲れ”に悲鳴をあげたくなる状況も出てきている。

 孫育てで不安を感じる人の支援に取り組むNPO法人「孫育て・ニッポン」(横浜市)の棒田明子理事長がアドバイスする。

「孫ができても、人生はその先20年30年と、まだまだ長い。まずは自分の生活を楽しむゆとりも必要。時間、お金、体力を残しておきましょう」

 棒田さんは全国各地で孫育て講座を開催し、イマドキの育児のコツ、子ども夫婦との付き合い方、孫との接し方を説く。8月27日、神奈川県清川村での講座には、50代と60代の女性9人が集まった。

「孫はかすがいだが、やりすぎてはいけない。育児方針を決めるのは親で、祖父母はあくまでサポーター。親にどんな子育てをしたいのか、どんなサポートが必要かを聞き、できること、できないことをきちんと言葉で伝える。親子だからこそコミュニケーションが重要です。お金のルールも決めましょう」

 自分がどんなタイプの祖父母かを知るチャート図も解説された。多くの祖父母が「良かれ」と思うことのデメリットに気づかせるのが狙いだ。熱心にメモを取る参加者たちの間で、いちばん盛り上がったのが「世代間ギャップ」の話。会場に足を運んだ保育士の女性(65)が言う。

「私たちが子育てしていたころは、栄養価の高さから粉ミルクがもてはやされていたし、子どもたちがテレビを見ている間に家事をした。でも今、娘はそれらを全部否定します。孫を預かっているとき、どうすればいいのか困ってしまうことがある」

 例えば沐浴はかつては常識だったが、最近は赤ちゃんの体力と免疫力が低下するとされ、産湯を使わせず、体をふくだけ。離乳食の開始時期も昔の生後2カ月から、今は平均生後半年以降へ遅くなった。抱き癖がつくと敬遠された「抱っこ」も、最近は「愛情を感じさせるために積極的に」と正反対。

「自分がやってきたことが正しいと信じすぎるのも娘たちとのトラブルのもとになる。事前に確認しておきましょう」(棒田さん)

週刊朝日  2014年9月12日号より抜粋