ところが、80年代から人気講師の獲得競争が激しくなり、2000年代に入ってからは人気講師が相次いで代ゼミを去り始める。

 予備校事情に詳しい関係者は、その理由をこう分析する。

「最も大きいのが映像授業の普及です。対面授業よりもカメラの前で話したほうが肉体的にも精神的にも負担が軽い。映像授業中心の予備校に移籍する講師が増えてきました」

 少子化の影響で次第に受験生が減るなかで、追い打ちをかけたのが08年のリーマンショックだ。不景気で現役志向が高まり、代ゼミもそのころから受講生の減少傾向が止まらなくなったという。

 予備校の講師は受講した生徒数に応じて報酬が支払われることが多い。それが、予備校自体に生徒が集まらないと、人気講師は他の予備校に移籍するようになる。その結果、合格実績は落ち込み、さらに学生が減る。悪循環だ。

 受験人口は92年度の約121万5千人をピークに減り続け、今春卒業の14年度入試では約71万6千人にまで減少している。驚くべきは予備校生の激減だ。92年度に約13万2千人いた予備校生は、14年度には約2万1千人。92年度との比較で受験人口が約41%減であるのに対し、予備校生は約84%も減少しているのだ。

 さらに、こんな事情もあった。ある教育業界の関係者が語る。

「今春の大学入試は特殊でした。ゆとり世代最後の入試で、来年度からは新課程で勉強してきた現役と受験で競わなくてはいけなくなるため、浪人を嫌う安全志向が働きました。それでも駿台や河合塾では、浪人してでも難関大や医学部を目指すという受講生が多いですが、私立文系志望者が比較的多い代ゼミは、浪人減少の影響をいちばん受けたのではないでしょうか」

週刊朝日 2014年9月12日号より抜粋