自公推薦候補者が敗北した“滋賀県知事選ショック”がさめやらぬ7月21日、アッキーこと安倍昭恵首相夫人は、被災地の宮城県気仙沼市大島を訪れていた。同日開催されたイベント「海を楽しむ会」に出席するためだ。青空の下、まばゆいばかりの砂浜で昭恵夫人がしていたのは……フラダンス! 満面の笑みを浮かべながら腰を振って踊っていたのだ。相変わらずの「天然キャラ」だったが、この日に限っては、ただ踊りに興じていたわけではない。
イベントの冒頭、昭恵夫人はこうあいさつをした。
「初めて地引き網を経験して『海っていいな』と思いました。私はずっと防潮堤フォーラムをやってきましたが、議論をしても関心のある方しか来ないし、物事が動くわけではない。『何ができるのか』と思った時に『海の楽しさを共有できたらいいな』(と思った)」
イベントを共催した大島観光協会会長が続けた。
「この小田の浜の砂浜は、被災地で唯一、原状復旧の(防潮堤の)高さを勝ち取った場所。島民の多くが『(必要以上に高い)11.8メートルの防潮堤はいらない』という選択をした。われわれが誇れる砂浜です」
昭恵夫人は、「防潮堤見直し」を勝ち取った記念碑的砂浜で、思いを込めて踊っていたのだ。
この問題に関する昭恵夫人の意識は高い。今年5月に仙台市で開かれたフォーラムでは、昭恵夫人は「海が見えなくなって若者が出ていってしまう」と、気仙沼市小泉地区の防潮堤計画(高さ14.7メートル)を問題視した。事実、地域住民からは「人の住まない農地を守るために(事業費)230億円を投じるのは税金の無駄」「海の景観や環境破壊を伴う」といった批判が集中。安倍晋三首相も景観や環境や住民合意への配慮を求めたほどだ。
だが、村井嘉浩宮城県知事と県は、昭恵夫人や首相の発言に耳を傾けずに防潮堤建設に突き進んでいる。
こうした状況について昭恵夫人に聞くと、
「本当は(今日のイベントが)小泉地区の海岸でできたら良かった」
と悔しさをにじませた。
一方、小泉地区の防潮堤推進派は「防潮堤の事業費は230億円で、その一部の用地買収費が地元に落ちれば、仮設住宅から出て将来、家を建てる頭金になる」と主張して譲らない。
昭恵夫人が「物見遊山して飲み歩いている」という誤解を解くには、渦中の仮設住宅で防潮堤フォーラムを開く必要があるのではないか。
(横田一)
※週刊朝日 2014年8月8日号