はしかはウイルス性の感染症で感染力が非常に強く、空気感染などで広がる。風邪のような症状のあと、39度以上の高熱と全身に赤い発疹が現れるのが特徴だ。気管支炎や肺炎などの合併症を起こしやすく、患者千人に0.5~1人の割合で脳炎を発症し、死亡する割合も千人に1人といわれる。一度かかれば生涯、体に免疫ができるが、現在も治療法はなく、予防法ははしかのワクチン(以下、麻疹ワクチン)接種しかない。
日本では、半世紀近く、はしか対策を続けてきた。1966年に麻疹ワクチンが初めて導入され、78年には、子どもへの定期接種が始まった。その後、はしかにかかる人は減少したが、それでも数年に一度は流行を繰り返してきた。
2007年には都内の大学生の間で大流行し休講が相次いだ。事態を重く見た政府は、08年度から12年度までの5年間、就学前に1回接種している中学1年生と高校3年生相当の年齢の人を対象に公費で、2回目の麻疹ワクチン接種を実施した。1回の接種では、20人に1人免疫がつかない人がいるためで、2回接種は世界的にも有効とされている。
この結果、流行は制圧できたかに見えた。しかし、問題は国内だけではなかった。13年12月から14年3月までの間に、はしかウイルスの検出が報告された135例中50例に海外渡航歴があったのである。