高い熱と全身に赤い発疹。ここ数年、沈静化していた麻疹(はしか)が増えている。国立感染症研究所によると、今年はすでに412件の報告があり(7月16日現在)、昨年1年間の232件を上回った。重篤な場合、肺炎や脳炎などの危険もあり、厚生労働省なども注意を喚起している。
昨年末から今年正月にかけて、フィリピンに渡航していた33歳の女性が帰国後に発熱、翌日に発疹が出て、医療機関を受診したところ麻疹と診断された。この患者の受診した医療機関では即座に、院内での接触者に対する注意喚起とワクチン接種の啓発が行われた。
このように海外から持ち込まれる「輸入はしか」により、全国各地の医療機関や、家庭内で小規模の感染が起きている。
実はアジア各地では、昨年末からはしかが大流行中だ。フィリピンを中心に、ベトナムやインドネシアからの帰国者から感染症が持ち込まれることも少なくなく、国内での感染拡大を防止するため、警戒が続いているのだ。この夏に海外旅行を計画している人も多いだろう。海外に行く際は、厚生労働省などのホームページで、渡航先で流行している感染症の確認と備えを済ませておく必要がある。
予防接種のなかった時代、はしかは「命定(いのちさだ)め」と言われ、子どもたちの命を脅かす病気だった。50歳代以上の人は、子どもの頃にきょうだいや家族に次々と感染し、高熱を出して寝込む日が続くなど大変な思いをした人が多いだろう。しかしはしかの脅威はけっして過去のものではないし、子どもだけの病気でもないのだ。