患者2人が死亡したのは、保険適応外の手術だったにもかかわらず、保険診療の対象となる開腹手術をしたと、千葉県がんセンターが診療報酬を請求していることが、わかった。同センターの医療事故報告書、内部資料から判明した。手術を執刀した同センターの消化器外科に所属するA医師(男性)を直撃し、話を聞いた。

――医療保険が適用されない手術なのに、診療報酬を請求していた理由は?

「腹腔鏡と開腹で両方あわせて手術していたのです。千葉の保健所に問い合わせて、全部を腹腔鏡でやったら問題だけど、(腹部の)中を見て、転移があるかどうかを見て、最後はおなかを開けて(開腹手術を)したら一応いいだろうと。言質はいただいています」

――腹腔鏡、開腹手術を混合させれば、混合診療になる。そうなれば、患者の10割負担となるはずで、結果的に不正請求になる。

「これはあくまで(保健所長の)私見なので、今後は先進医療で進めるしかないかなと、みんなで相談しています」

――腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術は保険の対象ではありません。

 
「『開腹すればいい』と言われたんです。ただ、こういうことがあったので、現在はやっていません」

――腹腔鏡だけで手術を終えるつもりだったのでは?

「腹腔鏡で観察して、ある程度やったところでおなかを開けてやる。ずっとそういうやり方だったので」

――あなたは処分は受けたのでしょうか。

「そのような形はなかったです」

――事前に院内倫理審査委員会を通さなかった理由は。

「私は昔から腹腔鏡の手術をやっていて、前の病院のときもやっていたので。そこは(報告書の指摘で)全部(委員会を)通してやれと言われました」

――ご遺族の方にお話は?

「今はしていませんが、事故調査委員会の結果が出たということは、もっと上の先生が報告しているはず」

 
――それはいつごろでしょうか。

「去年の秋ごろには行っているはずです」

――私どもが遺族に聞いた話では、調査報告は届いていないとのことですが。

「僕は上からそう聞いたので……。報告書が説明されていなかったら問題があります。それは確認します」

――患者には、腹腔鏡下手術について手術前にどう伝えていたのですか?

「先進医療みたいな形として、こういう方法もありますよという話をしてあります。ただ、実際には(症例が)少ないということと、長期のデータは出ていないという話もしてあります。患者さんにも選んでもらっています」

――遺族は、腹腔鏡を用いた手術をすることは聞いていたが、保険適用されていない手術だとは知らなかったとのことですが。

「説明が十分だったかと言われると、こっちはわかっていただいていたつもりでも、患者さんの遺族は十分にわかっていなかった可能性がある。そこはちゃんとしなければと、反省しています」

(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2014年5月2日号より抜粋