自分の遺産の相続先を考えたとき、相続人がいない場合はどうすればよいのだろうか。亡くなったAさんは、相続財産が自宅や預貯金など合計1億5千万円にのぼった。すでに死亡した妻とは再婚で、妻には前夫との間に3人の子どもがいたが、養子縁組していなかった。このため子どもたちは相続人にはなれない。Aさんが「妻と前夫との間の子ども3人に財産を残す」と遺言書を残しておけば、子どもたちが財産を受け継ぐことができたが、遺言書はなかった。
Aさんの父母もすでに死亡しており、法定相続人(法で定められた相続人)はAさんの兄と弟の2人となった。
ところが、その兄と弟は相続を辞退した。
「Aが面倒をみてきた3人の子どもが相続するのがふさわしいのではないか」と考えたからだ。兄弟は相続放棄の手続きをとり、相続人が「いない」状態にして、子ども3人が財産を受け取れるようにした。
これは「特別縁故者に対する相続財産の分与」という仕組みがあるからだ。
民法では、被相続人と生計を同じくしていた、被相続人の療養看護に努めていたなど被相続人と特別な縁故があり、家裁から認められた人は「特別縁故者」となることができる。
特別縁故者は相続人がいない場合、家裁に申し立てることで相続財産のすべてまたは一部を受け取る資格を得るのだ。
その場合はまず、家裁によって選任された「相続財産管理人」(通常は弁護士)が、相続財産を管理することになる。債務があるときは管理人が清算する。
特別縁故者が被相続人の財産を受け継ぐには、相続人がいないことが確定してから3カ月以内に、家裁に相続財産の分与を請求する必要がある。
※週刊朝日 2014年3月28日号