少子化はもとより、未婚化の問題も顕著になる現在。心理学者の小倉千加子氏は、現代の結婚できない女性たちの特徴をこう分析する。
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山田昌弘さんが『「家族」難民』というタイトルの本を出版したらしい。
少子化は日本では未婚化が主としてもたらしているわけだが、未婚化を止めることほど難しいことはない。
結婚しない人は結婚しないのではなく「適当な相手」がいないために結婚を先延ばしにしているのである。が、先延ばしにしていくうちに「未婚者」が「なし崩し非婚者」になっていく。
「AERA」(1月27日号)が「『家族難民』の時代」を特集していたが、「家族難民」とは、家族という存在を持てないがために、金銭的、心理的、社会的に孤立し、「難民化」する人々のことである。
山田さんは、日本では「介護や金銭面のサポートが必要な場合にも親身に援助してくれるのは、『家族』以外にはなかなかいない」と述べているが、家族のいる人が孤立していないと言い切ることはできない。
「特集『家族難民』の時代」では、40代で未婚の男女は、一人暮らしの人も親と同居している人も、殆(ほとん)どの人が仕事の責任を果たしながら生活面でも自立の努力をし、「家族」というより「家族のような繋がり」や「仲間」を求めていた。
さらに、「家族」を持たない人生について考え、孤立に追いやられないように備えようとしている。
40代の未婚者は最初から非婚の人生を選んでいたのではなく、「なし崩し非婚者」になるには、それぞれ尤(もっと)もな理由がある。ずっと親の面倒をみてきた人もいれば、仕事が忙しくて週末は疲れて寝ているうちに40歳を過ぎた人もいる。
「AERA」の特集では、取材されているのが40代の未婚男女ばかりで、なぜか30代の人は少ない。
2030年には、男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯未婚者になると予測されているが、生涯未婚者とは50歳で未婚の人を指す。2030年に50歳の人は現在34歳の人であるから、30代であっても高い確率で「なし崩し非婚者」になることになる。
しかも「生涯未婚率」はその後も下がる保証はないので、現在30代前半の男性は2人に1人が、女性は3人に1人が「家族」という存在を持たないまま50歳を迎えることもあり得る。
20代・30代の未婚者で「将来自分は結婚しない」と思う人で、その理由として「異性とコミュニケーションする方法が分からない」と回答する率が上昇している。この場合、「なし崩し非婚者」ではなく、「確信犯非婚者」とでも呼べばいいのだろうか。
「確信犯」という言葉が自信に満ちた印象を与えるが、「最初から降りている確信犯非婚者」が増加しつつあるのである。
「なぜ結婚しなくてはならないのか」という問いは、フランスとは違って日本では「なぜ恋愛しなくてはならないのか」という問いに容易に変わるかもしれない。
人が最終的に求めているのは「家族」ではなく、「家族のように親密な繋がり」であり「同好の士」なのである。そう考えれば、恋愛は2次元でするものであってリアルな世界ですることはないとするオタクの存在は時代に適応的である。
生涯未婚者の方が多数になった時に「家族難民」という言葉は消滅する。そもそも本物の難民は別の国に逃げてきて猛烈な勢いで人口を増やしていくのだし。
東京都は4割の人が「一人暮らし」という「シングルの首都」である。東京で起こることは全国で起こるが、これから中高年シェアハウスが増えていくだろう。「AERA」も家族以外の人と繋がるために学生寮や社員寮を薦めている。但しこちらは結婚の機会を増やすためである。
※週刊朝日 2014年2月28日号