月経時の下腹部痛など、月経トラブルは女性にとって身近なもの。月経痛で受診した人の約25%が、妊娠力を低下させる原因にもなる子宮内膜症患者だという。日本子宮内膜症啓発会議は「月経痛は病気のサイン」として、早めの受診を呼びかけている。同会議実行委員長で聖路加国際病院副院長の百枝幹雄医師に聞いた。
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約80%の女性に月経痛があるにもかかわらず、多くの人が痛みを我慢したり市販の鎮痛剤で対処したりしています。しかし月経痛があるということは子宮の収縮が強いと月経血が子宮に逆流する量も多くなり、子宮内膜症のリスクも高まります。初経から1年以上経っても月経痛が強い月経困難症の場合は、痛みをコントロールして生活の質を上げるために、また子宮内膜症を予防するためにも早めにLEP製剤(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、いわゆるピル)を使ったほうがいいでしょう。
ホルモン剤に心理的な抵抗感がある人も多く、LEP製剤は体に悪い、長く飲んでいると妊娠しにくくなると誤解している人もいます。しかし月経困難症の場合、LEP製剤を使うことで子宮内膜症を防げるため、むしろ、将来妊娠する力を保てる場合が多いのです。
少し前からLEP製剤の副作用として、頻度は少ないものの血栓ができることが指摘され、現在詳しい調査が進められています。より安全にLEP製剤を使うため、服用中に足の痛みや頭痛などを感じたら、すぐ受診するようにしましょう。
月経痛と並んで多い月経トラブルが過多月経です。過多月経は、子宮内膜症同様、妊娠力の低下につながることもある子宮筋腫の重要なサイン。「以前よりも月経血の量が増えている」と感じたら念のために受診してください。
子宮筋腫の治療は薬物療法と手術療法を組み合わせて実施されます。しかし筋腫は再発することの多い病気なので、早めに筋腫だけ取る手術を受けてしまうと、妊娠を考えたタイミングで再発し、妊娠・出産に影響する心配もあります。いつ手術を受けるかは妊娠・出産を希望する時期も考慮して決める必要があります。
繰り返しになりますが、月経痛も過多月経も大事な体からのサインです。「これぐらい普通」「我慢できるから大丈夫」と自己判断せず、一度は受診して治療が必要なものかどうか確認してもらうことが大事です。
※週刊朝日 2014年2月7日号