寒さも訪れ、受験シーズンが迫るこの季節。しかし、ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本の大学のレベルの低さに驚愕したという。

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 世界の大学のランキングを見て愕然とした。たかがランキングというが、されどランキングである。大学ランキングで最も権威があるのは、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)と、クアクアレリ・シモンズ(QS)という、英国の2社が発表しているものだとされている。

 ちなみにQSのランキングでは、1位がマサチューセッツ工科大学で、以下2位ハーバード大学、3位ケンブリッジ大学、4位ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン、5位インペリアル・カレッジ・ロンドンと続いている。

 日本はというと、東京大学はなんと32位でしかなく、京都大学が35位。ほかに100位以内に入っているのは大阪大学、東京工業大学、東北大学、名古屋大学と、六つだけである。私学で最も順位が高いのは慶応大学の193位、早稲田大学は220位でしかない。

 なぜ日本の大学はこんなに順位が低いのか。以前、東大の濱田純一総長に取材したとき、濱田氏は「東大を秋入学にする」と強く主張していた。欧米の大学は秋入学なので、それに合わせるのだという。

 ところが、現在のところ秋入学は実現していない。教授会の反対が原因と報道されているが、経済界や省庁などの強い反対が背後にあるようだ。日本の企業はほとんどが3月決算で、4月に新卒生を一括採用しているので、秋入学に変わると大きな混乱が生じるというのだ。省庁も4月入省を前提にしているので、やはり反対だという。

 東京大学が「秋入学」を主張したのは、それを契機に総合的な教育改革をスタートさせるためだ。ランキングの順位を上げるには、研究論文が世界でどれだけ引用されているかがポイントになるが、これが日本の大学は劣っている。世界で権威ありと認知されている学術誌に論文を発表しなければならないのだが、言葉の壁の問題もあり、チャンスをつかみにくいのだ。それでも東京大学や京都大学などの学生たちは果敢に挑んでいるが、この点では国立大学と私立大学で圧倒的な格差がある。

 濱田氏は日経ビジネス10月14日号のインタビューで「米国の大学が本当にうらやましい」と言い、日本の大学の根本的問題点を指摘した。

「ハーバード大学は、東大の年間支出とほぼ同額を、寄付基金の運用益だけで稼ぎ出すほどですから。東大の教授の給与は1000万円程度ですが、そのレベルではトップクラスの外国人教員は来てくれません。最低でも2000万円、住宅手当なども必要です」

 つまり米国の大学に比べ、日本は教育にかける費用が少なすぎるのだ。だが、全国のほとんどの私立大学の総長たちは、そう漏らす濱田氏のことをうらやましがっているはずだ。学生一人あたりの費用を見れば、東大は私立大学に比べて極めて恵まれていることになるからである。

 寄付税制などの問題もあるのだろうが、日本は卒業生などからの寄付金が少なすぎる。ハーバード大学やスタンフォード大学などはいずれも私立大学だが、国家からの予算は受けていない。それにもかかわらず、東大総長がうらやましがるほどの寄付金が集まっているのである。

 日本は今や先進国となったはずだが、教育については、まだ発展途上国の段階から脱却できていないと言わざるをえない。

週刊朝日  2013年11月1日号