福島第一原発の汚染水問題をめぐり、自民党の政務調査会の各種会議では、原発政策についての議論がかまびすしくなってきた。
だが“反核燃料サイクル”など、きわどい主張は政調から外れたグループから出る、といういびつな構造となっている。
政調の各種会議の中で、異端ぶりを発揮しているのが「福島原発事故究明に関する小委員会」だ。資源・エネルギー戦略調査会(山本拓調査会長)のもと、より専門的な観点から原因究明をしようと設置された。小委員長の村上誠一郎元規制改革相(61)は党内の一言居士として知られる。
9月27日に開かれた小委員会で「福島第一原発事故の提言書」をまとめ、20人ほどの出席議員から了承を得た。村上氏は「近々“個人的に”安倍首相のところに持っていこうと思っている」と語った。
小委では8月に、原発の新規建設について、使用済み核燃料の最終処分法が確立するまで見送ることなどを盛り込んだ“過激”な提言書をまとめた。政調内部から新設見送り案が出ること自体が異例のことだ。お盆前後にも安倍首相に提出する予定だった。
ところが山本調査会長や原発推進派からの巻き返しもあり、今回の提言書では「原発の新規建設は原子力規制委員会に委ねられているが、使用済み燃料棒の再処理については経産省が可及的速やかに方針を策定すべきである」に後退。
「前回いろいろな議員から意見が出たので、今回はそれを加えて書き直したり、婉曲的表現にしたりして、やっと満場一致にこぎつけた」(村上氏)
ある政調幹部によると、
「村上氏の根本は脱原発。原発について輸出を再開し、再稼働についても前向きな政権の方針を覆すような方向性を打ち出す可能性があるものは到底受け入れられない」
つまり官邸を支える党としても、こうした主張を正式に政調内部の手続きを通した上で官邸に持ち込むわけにはいかない。村上氏もそれをわかった上で“個人的に”と注釈をつけたのだ。
ちなみにこの村上氏、歯に衣着せぬ物言いが持ち味で、過去に勉強会で、「首相はいつから原発メーカーのセールスマンになったのか」と、原発輸出にいそしむ安倍首相を強烈にあてこすったこともあった。
また旧通産省出身で原発推進派の細田博之幹事長代行(69)についても、「族議員の権化」とこき下ろした。党内では一匹オオカミ的存在だけに、「賛同者を増やす政治力があるわけではない」(同前)とみられている。
一方、最初から政調を頼まず、有志の勉強会ベースで勢力の拡大を目指すグループもある。1年生議員である秋本真利衆院議員(38)を中心とするグループだ。
これまで定期的に講師を呼び、原子力政策についての勉強会を行ってきた。従来の政策に少なからず懐疑的な目を向けている議員が多いのが特徴だ。
9月20日には6議員で茨城県東海村を視察し、東海原発の廃炉状況などについてヒアリングを実施。さらに10月2日には、核燃料サイクルの本丸である青森県六ヶ所村を視察する予定だ。
「7月の参院選で初当選した参院議員のリクルートも積極的に行っています。視察を終え議論を重ね、核燃料サイクル見直しについての提言書を、年内に官邸に持っていきたい」(秋本氏)
税制や人事などを巡り、ただでさえ安倍官邸との力関係を表し「政高党低」と揶揄される自民党。官邸の顔色をうかがうばかりでなく、時にはひっくり返すような気構えがほしいものだ。
※週刊朝日 2013年10月11日号