今季の全米オープンで10位、全英オープンで6位に入る大健闘を見せ、来季の米ツアーシード権を獲得した松山英樹さんの強さについてプロゴルファーの丸山茂樹氏はこう話す。

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 あっぱれ、あっぱれ!

 松山英樹(21)がプロ転向後4カ月半にして、来季の米PGAツアー出場権を獲得しましたよっ。

 8月18日まで開催された男子のレギュラーシーズン最終戦・ウィンダム選手権で15位。今季の獲得賞金総額はランキング105位相当の約77万2千ドル(約7500万円)でした。10月に開幕する2013~2014年のツアーに本格参戦します。

 ビックリしますね。プロとして出たPGAツアーは6試合だけ。最悪でも21位ですからね。この安定感はすごいですよ。僕がPGAツアーに本格参戦したのが2000年。30歳でした。今年の英樹と同じ21歳でPGAなんか行ったら、「歯が立つ」なんてことを語れるレベルでもなかったと思う。

 まあ言わせてもらえば、僕らの時代に比べて道具が格段に進歩しましたけどね。いまの道具で、僕ももう一回、小学生からやり直したいですよ! 僕の感覚をもってして、どこまでいけたのか。英樹を始め、若い人たちがうらやましいです。

 そんな話は置いといて。4月にプロ転向したあと、英樹はいい順序で歩んできたと思うんです。日本ツアーで2勝して、出るたびにトップ10に入って。そこでつかんだ自信が、全英オープンからの5週連続参戦で花開いたのでしょう。この世界、順序って大事なんですよ。日本ツアーの経験なしに海を渡っても、そうはうまくいかなかったんじゃないでしょうか。

 英樹はPGAツアーで二つの驚異的な数字を残しています。ツアーの規定ラウンド数には達していませんが、平均スコア68.774はタイガー・ウッズ(米)に次ぐ2位相当。また最終日の平均スコア68.33も、2位に相当するんです。

 最終日の日曜日に強いのは、すべての反省点を最後にきちんとプレーにつなげられているからでしょう。英樹のように最後まで体力を維持して、集中力を高めていける日本選手は、ここ最近ではいなかった。

 自分に自信があって、最終日に「今日しかないんだ」と思うと、「ゾーン」とまではいかなくても、その手前ぐらいの段階に入って、グーンと集中力が高められる。「自分でつくり出す相乗効果」とでも言うのかな? 自分の中でつくりあげるバイオリズムが抜群なんだと思いますよ。

 内容的には抜きんでたものはないけど、全体的なバランスがいい。ドライバーの正確性もパーオン率もパッティングも、トップ10圏内ぐらいにはいた。そういうときって、自分で「いい感じ」って思い込めてるはずなんです。

 全英オープンではフィル・ミケルソン(米)、ブリヂストン招待ではタイガー、全米プロ選手権ではジェイソン・ダフナー(米)と、英樹と一緒に予選ラウンドを回った選手が優勝しました。日本のメディアは「福の神」なんて騒ぎましたけど、僕も何度も経験しました。当たり前といえば当たり前のことなんですよね。世界ランキングが上がるほど、濃いメンバーと組まされるんですから。英樹は最新のランキングで28位。これからもそういうことが度々あるでしょう。来季の米ツアーも相当いいメンバーと回れるはずですよ。

 英樹には、順序を大事にして、地道にステップアップしていってほしいです。ジャンプアップなんて、現実には絶対ないですから。まず彼に直接会って、いろんなことを話してみたいですね。

週刊朝日  2013年9月6日号