尾木直樹さん (c)朝日新聞社@@写禁
尾木直樹さん (c)朝日新聞社@@写禁

 滋賀県大津市の中学2年生が自ら命を絶った日から、1年が経とうとしている。「いじめ」の実態が浮き彫りになっていく中、市の第三者調査委員会がその真相解明を進めている。だが、教育行政にはびこる悪弊は根深いようだ。

 調査委発足から1カ月半の間、すべてが順調に進んだわけではない。委員の熱心さに水を差したのは、やはり教委だったという。今回、調査委の委員の一人、教育評論家の尾木直樹氏(65)がその経緯を明かしてくれた。

 男子生徒をとりまいていた状況を詳しく知るため、調査委は9月、中学校を訪問することになっていた。そこで事前に学校に対して、

「授業視察させてほしい」
「先生たちに休み時間の5分でいいからあいさつさせてほしい」
「生徒が亡くなった現場を案内してほしい」
 と要望を伝えた。

 しかし、訪問直前になって学校側から届いたという「回答」の文面に、尾木氏は目を疑ったという。

「授業視察に関しては〈案内する。教室に入って頂けるかどうかは検討する〉、先生へのあいさつに関しては〈休み時間といえども先生たちは次の指導のため忙しいから難しい〉、現場までの案内に至っては〈学校内のことではないので、学校からは案内できない〉と実質的にすべて断ってきたのです。回答は校長名でしたが、実際の判断に市教委がかかわっているのは間違いありません。警察の強制捜査を受けても、何も反省していないのかと呆れてしまいました」

 尾木氏は、もし「要望」を断るなら自分は視察に参加しないで、すぐに記者会見を開いて経緯を公にすると告げた。すると数十分後にはすべての「要望」に対しOKが出たのだという。あまりのいい加減さに驚くほかない。

週刊朝日 2012年10月19日号