6年間かけてじっくり学力を向上させる、中高一貫校の人気が高い。関西には体力づくりのユニークなカリキュラムを取り入れ、京大合格者を輩出する中高一貫校がある。
その一つは開明(大阪)だ。1914(大正3)年に大阪商業会議所が国際人育成のために設立した大阪貿易語学校が前身。戦後は商業高校となり、64年に普通科を設置。91年に中高一貫校となった。この年代が卒業した97年を機に国公立大合格率(浪人含む)が50%を超え、以来、50~60%を推移している。本誌調査の「全ての国公立大現役合格率」も36.6%と高い。躍進の要因を早坂元実校長はこう語る。
「中学設立の際、自分が何者かもまだよくわかっていない年ごろの生徒には、勉強だけを教えるのではいけない、学びの土台をつくらなければ、と決めたのです。中学では、体力、好奇心、協調性を身につけるため、総合学習としての行事を大切にしています」
中学に入学するとすぐ、山間部で1泊2日のオリエンテーション合宿がある。中1の林間学校にも山登りがあり、歴史探訪で高野山に登ることもある。「体力」がつく行事が多い。その集大成といえるのが中3の3月に実施される「夜間歩行」だ。広島県生口島(いくちじま)の海洋センターから愛媛県今治(いまばり)市の糸山公園まで、約43キロの道のりを約15時間かけて夜通し歩く。午後3時ごろスタートして瀬戸内海に浮かぶ大小の島々を歩き、夜明け前の翌朝6時ごろにゴール。こうした行事を通して、体力を培うとともに、心を鍛え、仲間と協力することの大切さを学んでいく。
中2で実施する1泊2日の理科実習も同校独特の行事だ。和歌山県加太(かだ)湾で砂岩と泥岩が交互に重なる地層を見学し、実験に必要な生物を自ら採取する。生物は、ヒトデ、アメフラシ、ウニなど多様だ。採ったあとは班ごとにテーマを決めて解剖や実験をする。
ちなみに同校では、中学に入学すると、一つずつ解剖セットを購入する。紙の上での学習ではなく、あくまでも観察や実験を重視しているのが同校の理科教育といえる。
「何事も自分の目で見たり、触ったり、体験することが大切です。体験による学習を中学でたくさんさせてから高校に送るようにしています。ですが、高校からはスタンスは変わります。行事もぐっとしぼる。高校では自分の進路をしっかり考えさせ、綿密な進路指導も行います」(早坂校長)
高2進級時に文系・理系を選択、ある程度、志望や成績によりクラス分けされる。各コースごとに、丁寧な指導の下で勉強に励む。
「昨年は京大に現役で10人合格。中学受験でいろいろ落ちてわが校にきた子が京大に入るなんて、親御さんも思わなかったのでは。わが校での6年間で変わるのですから、お得です」
早坂校長も笑顔を見せた。
※週刊朝日 2013年8月30日号