さて、ブラック企業に対しての私の考えは、くだらないプライドを捨てて自由になりましょうということだ。楽しい仕事ならば労働時間が長かろうが給料が少なかろうが、あまり問題にはならない。テレビ局で働く下請けの制作会社のADなんかはまさにそのような職種の一つだろう。派手なテレビの世界で働けるからこそ、きつい労働も安い給料も甘受できているんだろう。しかし、それが単純労働でつまらないとなればブラック企業と名指しされることになる。ブラック企業は昔からあったし、それが最近のネット社会において顕在化されてきただけなのだろう。
私に絡んでくる人たちは、「ブラック企業は辞めさせてくれない」とか、「辞めた後も嫌がらせをされる」とか、あるいは未払い給料を取り戻すために訴訟うんぬんとかいろいろなことを言ってくる。
おそらく小学生の頃から他人に迷惑をかけるなとか、生真面目に生きる方法ばかりを習ってきているので、ブラック企業だと思って辞めたいと考えても、わざわざ辞めますと律義に挨拶をしにいって無理やり引き留められたりして困った状況に自ら向かっているのだと思う。なかには、「守るべきものがあるから辞められない」なんて発言もあった。たぶん、今の収入を簡単に捨てられないとか、家族に対してのプライドなんかもあるのだろう。プライドを捨てて一から出直す気持ちになればいいのに、と私は思ってしまう。
私への返信のなかで面白いなと思ったコメントは、まさに家庭内暴力で離婚をしたいと思っている夫婦の片方が別れたい別れたいといいつつも、ずるずると付き合ってしまう状況とブラック企業の問題は似ているんじゃないか、というものだった。問題は企業側だけにあるのではなく、雇われている側にもあるのだ。
※週刊朝日 2013年7月12日号