東京電力は10月2日、福島第二原発で使用済み燃料を貯蔵プールに移す作業を報道各社に公開した。週刊朝日も東京電力に取材を申し込んでいたが、なんと拒否。ジャーナリストの今西憲之氏が、そのあきれた経緯を報告する。
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今回、連名で申し込んでいた別の記者はOKなのに、東電は、私に対してだけ参加を拒否すると回答してきた。
「今西さんとは過去にいろいろありました」と、東電の担当者は言ってきた。“過去”とは、週刊朝日が昨年9月16日から3週にわたって連載した「福島第一原発完全ルポ」のことだという。
この記事は、私が福島第一原発のある幹部社員の了解のもとに、原発事故の現場に数カ月にわたって何度も入り、自分の目で見て感じた原発事故の現場を書いたものだ。国と東電が事故現場を隠し続け、自らに都合の良い「大本営発表」で情報をコントロールする状況を憂い、本当の姿を伝えようとした取材だ。その内容は、その後の著書『福島原発の真実 最高幹部の独白』にも収録した。
あまりに身勝手な東電の理屈に本誌が抗議すると、今度は「マスコミ取材を断っていた原発事故の現場に勝手に入り、記事にした。公平性の観点からだ」という。自分たちに都合の良い報道を横並びさせたいという意図が透けて見える。本誌は抗議の意味を込めて、許可された別の記者の取材を辞退した。
10月1日にあった東電の会見で、私を取材拒否した理由をジャーナリストの木野龍逸(りゅういち)氏が問うと、東電側は、「具体的には申し上げられないが、私どもとしては目に余る取材があったということで、お断りした」と回答した。
原発事故をいまだに収束できず、おまけに莫大な税金が投入されている。被災住民との交渉にも向き合わない東電こそ“目に余る”。
※週刊朝日 2012年10月19日号