阪神上層部は制球力抜群だった山本氏に頼んだが、そもそも投手としてのタイプが異なる。藤浪は完全なパワー系投手。自分の投球スタイルがある投手に、真逆と言える制球力重視の形を短期間で教え込むには無理がある。結果的に、キャンプ中に元のスタイルに戻した結果があれです」(前出の阪神担当記者)

 テイクバックやリリースポイントの修正など、山本氏は献身的に藤浪に指導した。他球団OBのレジェンドに長期の臨時指導を任せるなど異例のこと。阪神側の必死さの表れにも見える。

 エンゼルスの大谷翔平と同期のプロ8年目。大阪桐蔭高では春夏連覇と、高校時代の実績は大谷を大きくリードしていたが、今では立場が逆転。メジャーリーガーの大谷は左ヒザ手術から順調に回復し、早い段階での二刀流復活を果たせそう。逆に藤浪はもがき続け、開幕一軍すらわからない。ただ、11日のヤクルトとのオープン戦では、課題の“抜け球”は相変わらず出てしまったものの、それでも4回2安打無失点、5奪三振、1四球の好投で希望の光も見せている。

「晋太郎なしでも日本一になりますし、晋太郎がやったらぶっちぎりで日本一になります」

 矢野燿大監督は何度もその名を口にするように、藤浪を常に気にかけている。周囲は今でも期待しているのだから、あとは本人の頑張り次第。藤浪の活躍で阪神が日本一になれば、矢野監督の台詞は名言になるだろう。しかし今まで通りならば、縦縞のユニフォームも見納めになる可能性が高い。藤浪は正真正銘の崖っぷちだ。

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