そしてプロで最高の成績を残したのが山本だ。ドラフト時点では3人の中では最も評価が低かったものの、希望する地元の広島に1位で入団。プロ入りからしばらくは確実性の低い打撃が弱点だったが、7年目の1975年に初めて打率3割をクリアして首位打者を獲得。更に30歳を過ぎてから打撃が格段に向上し、32歳から37歳となるシーズンの6年間で4度のホームラン王、3度の打点王という結果を残した。最近では和田一浩(元西武中日)、金本知憲(元広島・阪神)などベテランになってからホームラン数を伸ばす選手は少なくないが、当時では異例の遅咲き選手だったことも特筆すべき点である。また外野の守備にも定評があり、ダイヤモンドグラブ賞(現在のゴールデングラブ賞)の10回受賞、10年連続受賞はいずれもセ・リーグ記録である。

 同じチームから複数の選手がドラフト1位でプロ入りするケースは時折見られるが、三人が同時という例は少なく、法政三羽ガラスを除くと他には4例しかない(1977年の法政大は江川卓、金光興二、袴田英利が1位指名されているが、金光がプロ入りを拒否しているため除いた)。その4例と、指名された選手のプロでの成績を並べると以下のようになっている。なお現役選手は昨シーズン終了時点での通算成績としている。

・早稲田大(1969年)
谷沢健一(中日1位)
1931試合 2062安打273本塁打969打点42盗塁 打率.302

荒川尭(大洋1位)
225試合 195安打34本塁打98打点10盗塁 打率.253

小坂敏彦(巨人1位)
105試合 9勝8敗2セーブ 防御率4.74

・法政大(1982年)
田中富生(日本ハム1位)
199試合 28勝45敗1セーブ 防御率4.73

木戸克彦(阪神1位)
965試合 505安打51本塁打226打点8盗塁 打率.230

西田真二(広島1位)
777試合 402安打44本塁打226打点21盗塁 打率.285

青山学院大(1996年)
井口資仁(ダイエー1位)※日米通算
2408試合 2254安打295本塁打1222打点224盗塁 打率.270

沢崎俊和(広島1位)
180試合 24勝17敗15セーブ0ホールド 防御率4.70

清水将海(ロッテ1位)
683試合 314安打9本塁打119打点3盗塁 打率.212

・早稲田大(2010年)
大石達也(西武1位)
132試合 5勝6敗8セーブ12ホールド 防御率3.64

斎藤佑樹(日本ハム1位)
88試合 15勝26敗0セーブ0ホールド 防御率4.34

福井優也(広島1位)
117試合 32勝37敗0セーブ0ホールド 防御率4.54

次のページ
プロで3人ともに活躍するのは異例中の異例