日本では今、経済対策として新規の補正予算を組む声が高まっている。26日には自民・公明の両党が安倍政権に経済対策の策定を求める方針を決定。では、台湾はどうか。台湾立法院(国会)は25日、600億台湾ドル(約2200億円)を上限とする経済対策の特別予算案を可決した。大きな打撃を受けている観光産業への支援などが柱になる予定だ。

 そのほかにも中国へのマスク輸出禁止や厳しい渡航制限など、蔡政権が次々と打ち出す方針に当初は批判もあった。それでも、28日現在で感染者数が34人に抑えられていることから、批判は少なくなっている。台湾では、2003年に起きたSARS(重症急性呼吸器症候群)で84人の死者を出した。その時との違いも、高い評価を得ている理由だ。検査体制が異なるため単純な比較はできないが、日本の感染者数230人(クルーズ船の陽性反応者705人を除く)、韓国の2000人以上(いずれも28日現在)と比較しても、現時点での封じ込め対策は一定の成果を出しているといえるだろう。

 台湾在住のノンフィクションライターの近藤弥生子さんは、こう話す。

「一般の人々が不安に感じていることについて常に先回りした対応をしていること、そして蔡総統や蘇貞昌行政院長(首相に相当)が寝る間を惜しんで必死に感染症拡大に奮闘している姿が伝わってきます。武漢からチャーター機で帰国した台湾人から一人の感染が確認された時は、陳時中衛生福利部長(保健相)が記者会見で涙を流しながら『患者の数は増えてほしくない。だが、逆に考えると命を救うことができる』と訴え、その真剣な姿に台湾人から称賛の声が相次ぎました」

 “神対応”を連発する蔡政権のなかで、世界から注目されているのがデジタル担当政務委員(大臣に相当)のオードリー・タン(唐鳳)氏だ。タン氏は世界的に有名なプログラマーで、現在38歳。8歳からプログラミングを学び、14歳で中学を中退。15歳でIT企業を起業した。その後にトランスジェンダーであることを明かし、36歳で入閣した時は性別欄に「無」と記入した。タン氏はIQ180ともいわれる天才で、台湾の人々は「彼女の存在は私たちの希望」と慕う。

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