最後に、平成を象徴するヒーローがキムタクだとしたら、松はヒロインの最有力候補である。ふたつの作品でその相手役をこなし、どちらも大ヒットさせた実績はもっと評価されていいはずだ。

 にもかかわらず、彼女がそこまで王道を行っているように見えないのは「梨園の娘」だからかもしれない。江戸期以来の高麗屋のDNAがそうさせるのか、ベタな芸能界の時間とは別の流れを生きている感もあり、それが世間には「負の違和感」ともなってかつてのバッシングにもつながった。

 その違和感を完全な「特別感」に変えることが、松たか子のシンデレラストーリーだったのである。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など。

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