

42歳での電撃結婚。そして伝説の高齢出産から2年。母として、女優として、ますますパワーアップした水野美紀さんの連載「子育て女優の繁忙記『続・余力ゼロで生きてます』」。今回は、チビが突如歌に登場させた「謎の人物」について。
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ドラマの中で、思いもよらない人物が、思いもよらないタイミングで登場するということは良くある。大抵その人物は物語を大きく動かすキーパーソンになる。
ミステリーだったら、そいつは犯人かもしれない。恋愛ものだったら、ヒロインの恋路を邪魔する人物。ドリフだったら「変なおじさん」だ。
その人物の登場に、視聴者は心ざわつかせることになるのだ。
それに似た感覚を味わう事件が、最近我が家に勃発した。
これから書き綴る我が家の日常の中に、意外なタイミングで意外な人物が登場する。
いやいや期が勢いを増すばかりの2歳半のちび。こちらが「ダメよ」と言うと大抵逆らう。
今朝も着替えをさせた直後に服を脱ぎ捨てて全裸になり、こたつの中に潜り込んでなかなか出てこなかった。
無理やり引っ張り出そうとすると暴れて大変なので、こういう時は気長に出てくるのを待つのに越したことはない。
が、登園時間も迫ってくるので、そんなにのんびりしていられない。
内心焦りながら、そうだ、と私はこたつに向かって歌いかける。
「ありの~ままの~」
うちのちびは歌が大好き。
保育園で習った歌、テレビで知った歌、色んな歌を毎日口ずさむ。
そして「いっちょに」と、我々も歌うことを要求される。
なので、いやいやが始まった時に歌で気を逸らすという作戦が有効なのである。
最近は「アナと雪の女王」に夢中で、エルサのあの有名な曲を叫びまくるのだ。
「ままの~」
こたつの中からくぐもった歌声が聴こえてくる。
「ちゅがたみてる~のよ~」
全裸でこたつにもぐっているちび。まさにありのままの姿。
「なーにーもー怖くーなーいー」
ああそうだろう。怖いものなしだよきみは。