「ちゅこーちもちゃむくないわ」

 そりゃそうだ、コタツの中なんだから。

 歌ったら気が済んだのか、こたつから這い出してきて、

「ちゃむいちゃむい」

 と言うちびに急いで服を着せた。

 保育園から帰宅すると、その日、園で歌った歌をリビングで口ずさむ。

 こないだ、久しぶりに「犬のおまわりさん」を歌いながら歩き回りはじめたちび。

「おうちーをちいてもわからないー
 なまえーをちいてもわからないー」

 きっと久しぶりに園で歌ってきたのだろう。

 随分と明瞭に歌えるようになってきたな、と私は夕食をテーブルに運びながら聞き耳を立てていた。

「い、ぬ、のー、えりちゃんのままー」

 ここである。全く意外なタイミングで登場した「えりちゃんのまま」。

 我々の知る限り保育園にえりちゃんという子はいない。近所にもいない。

 全くもって謎の人物、えりちゃんのまま。

 えりちゃんのママが犬なのか、それとも、えりちゃんが犬で、そのママなのか。

 私と夫は顔を見合わせて、首を傾げるばかり。

 何度歌っても、えりちゃんのままはこのタイミングで登場する。

 そしてそれ以外のシーンでは登場しないのである。

 謎の人物「えりちゃんのまま」に心ざわざわな日々。

 この先どんな展開が待ち構えているのか。

 我々はその人物の謎を解き明かすことができるのか。

 夫と共に注視していきたい。

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水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

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