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50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えて、カムバックを果たした天龍源一郎さん。今年2月に70歳という人生の節目を迎える天龍さんが、いま伝えたいこととは? 今回は「抱負」をテーマに、飄々と明るく、つれづれに語ります。
【天龍さん、「プロレス会場のような刺激をもらえる場所」ってどこですか?】
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新たな一年が始まったね。いよいよ俺も70歳か。昭和から平成にかけて、相撲とプロレスという極端な世界のなかで本当に腹いっぱいの格闘人生を送ってきたけれど、素直に話すと、まだ50歳を少し超えたくらいの感覚なんだよ。でも、実年齢はもうすぐ70歳なわけ。「ここまでよく生きながらえたな」っていうのが、やっぱり正直なところだよ。
それこそジャンボ鶴田を筆頭に、一緒にしのぎを削った仲間たちも、ふと振り返ればその大半が天に召されてしまった。だからかな、最近は、特に両親に対する感謝の意識が強まってきたように感じている。「こんなに丈夫に産んでくれて、ありがとう」ってね。月並みかもしれないけれど、やっぱりこのひと言しか浮かばないよ。誰しもが同じ条件のもとで生を受けたわけだし、その後がいい人生だったかどうかも含めて、改めて親に感謝するということだと思うんだよね。
だってさ、俺と同世代なら会社は退職しているし、ほかに感謝するものがないじゃない。自分中心で生きてきた人生もあるだろうし。もちろん奥さんが健在なら奥さんに感謝という人も多いけれど。まあ、いまの心境はこんなところかな。
今回のテーマは、時期的に「抱負」か。日本人って、新年を迎えるにあたって意外と気構えるんだよね。俺も相撲時代には、きちんと朝風呂に入って髪をセットし直して、紋付袴姿で皇居の方角に一礼をして、それから親方に新年の挨拶をするというのが決まり事だったな。だから、プロレスに移ったときのだらしなさには本当に驚いたよ。せめて馬場さんの家には挨拶に行きたかったんけど、馬場さんは、「いいよ、正月から来なくて」っていう人だったから。面倒くさいし、挨拶なんて来なくてもいいって、もう、滅茶苦茶だよ(笑)。