「あんたの悲しみはわかる。大丈夫か」
いつもの舅だと思った。が、この日は様子が違った。
「なんやったら、オレまだ元気やから、子ども仕込んだろうか?」
耳を疑った。冗談かと思ったが、舅の顔はいたって真面目だった。良子さんは思わず言葉を失った。
後日、三松さんのところに相談にきた良子さんは、「もう里帰りは嫌です。でも、こんなこと、夫にも相談できません」と話したという。
■心を病まないためには、距離を置く工夫を
2つの事例のように、三松さんによると、帰省時のもめごとの背景には「義父母の関係性」がある。
「相談者には『舅と姑は仲がいいですか?』と必ず質問しています。お姑さんの場合、夫に不満がある人は息子に愛情を向けるので、嫁を敵視する傾向があります。離婚や、死別している人もリスクが高くなります」
前者の美咲さんのケースでは、舅と姑は口も利かないような冷え込んだ関係だった。これに対し、嫁と舅の仲の良さが姑の嫉妬を募らせたのだ。
「二人きりで行くのはよくなかったですね。信頼関係が大事ですから、先にお姑さんにお伺いを立てるべきでした」
後者のセクハラも、構図は同じようだ。
「今の60代は、バブル絶頂期を経験した人たち。たくさんの恋愛や派手なデートを楽しんだ世代です。男性は歳をとっても精力旺盛な方もいますが、女性はそうはいきません。夜のコミュニケーションが釣り合わなくなり、性の矛先が嫁に向くというケースはあります」
姑・舅との関係がうまくいかず、なかには精神的に病んでしまう人もいる。時には思い切って距離を置くのも手だ。三松さんによると、義父母と自然に距離を保つ方法が2つあるという。
「一つ目は、連絡の取り方を変えることです。過去に失恋経験がある方は、当時を思い出してください。会う頻度が減っていって、最後には自然消滅という流れを経験したことがあると思います」
コミュニケーションを段階的に変えるのがポイントだ。まずは直接会っていたのを電話に変える。それを少しずつメールや手紙に変え、最終的にはその頻度を落としてく…といった具合だ。