一方、こうして多種多彩な株主優待をもらっているうちに、人間関係にも変化が生まれたといいます。

「自分で消化し切れない優待品や優待券を進呈すると喜んでもらえて、人間関係も円滑になりますね。先日も講演で九州を訪れたのですが、現地に株主優待を利用できるホテルがあったので、広島と埼玉にいる妹たちを招いて一緒に宿泊しました。友人と食事をしたり、飲みに行ったりする際にも、優待券で料金を支払って感謝されます」
 
 そのような経験を重ねるうちに、昨年、ピンとくる出来事がありました。「体内の炎症物質を減らすと長生きする」という特集のテレビ番組を見ていた時のことです。

「その番組によれば、『炎症物質を減らすには人に親切にするといい』とか。株主優待を誰かにプレゼントすることは、長生きの秘訣にもなるわけです。この生活を始めて9年が経ち、今年で70歳になりますが、それは新たに気づいた株主優待の効能かもしれません」
 
 先述したように株価は変動するもので、それが不安でたまらないなら、手を出さないほうがいいでしょう。ですが、そうでなければ、優待生活で長寿をめざすのも一考かもしれません。

「ほとんど利息のつかない預金にお金を寝かせておくぐらいなら、優待株を買って人に親切にするほうが有意義だと思います。だから、今後も私は優待投資を続けます。そして、優待を人と分かち合いながら、できるだけ
長生きしていきたいですね」(文/大西洋平)

〇桐谷広人さん:1949 年、広島県生まれ。元プロ棋士七段。365日間、ほ
ぼ現金を使わずに株主優待だけで暮らす投資家としてテレビで紹介され、大いに話題を集める。現在は約1000銘柄を保有中で、そのうちの約900 銘柄が優待株。

※週刊朝日MOOK『定年後のお金と暮らし2020』より抜粋

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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