彼はセイバーメトリクスという統計学に基づいてチーム編成を行い、2004年には看板選手だったノマー・ガルシアパーラ遊撃手をシーズン途中に放出するトレードで地元から批判を浴びつつも結果的に戦力アップに成功。この年にレッドソックスを86年ぶりのワールドシリーズ制覇へ導く功労者の一人となった。2011年オフにはカブスの編成トップに就任。ここでも成功をおさめ、2016年には108年ぶりのワールドシリーズ制覇を実現している。

 映画にもなった『マネーボール』で有名なアスレチックスのビリー・ビーンGMは元メジャーリーガーだが、目立った活躍はできずに27歳で引退。その後は名GMとうたわれたサンディ・アルダーソンの下で修業し、彼が参考にしていたセイバーメトリクスに影響を受けた。統計重視で低予算ながら有機的な球団編成の妙を長年にわたって学んだことが、GM就任後の成功の礎となっている。

 そのほかにも、フロント業務から頭角を現したヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMやカージナルスのジョン・モゼリアクGM、投資銀行出身でレイズではGMを務めた現ドジャース編成トップのアンドルー・フリードマンなど、やはり編成の手腕や金銭管理に長けた人物がGMに多く就いている。

 NPBで初めてGMの肩書を名乗ったのは、1995年に千葉ロッテで同職に就いた広岡達朗だと言われている。ただし権限の範囲があいまいでフロントや監督と軋轢が生じ、わずか2年で退団した。

 中日では現役時代は三冠王にも輝いた大打者で、監督としても実績を残した落合博満が2013年オフからGMに就任。総年俸額カットのために大ナタを振るったことで大きな話題になったが批判も浴び、2017年1月に同氏が辞任するとGM職そのものが廃止されてしまった。

 現在の主なGMは元監督の渡辺久信(西武)や福良淳一(オリックス)、元メジャーリーガーの石井一久(楽天)など。このうちNPB球団の編成トップとして異色の経歴を持つのはやはり石井で、引退後はコーチや監督など指導者の道ではなく吉本興業の契約社員として解説者などを務めるかたわら、一般社員として勤務していた。

 GM就任は2018年9月で、これは同年1月に死去した楽天の編成トップ、星野仙一の後任としてだった。今オフには昨年の最下位からチームをAクラス(3位)に導いた平石洋介監督を降ろし、肩の衰えが顕著だったとはいえ、球団創設からの看板選手でもあった嶋基宏捕手の退団を招いたことで石井GMを非難する声も挙がっている。

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日本でもMLBタイプのGMが増える?