浅沼:20歳そこそこくらいの時期なら、モテれるもんならモテたい!と思っただろうけど、この歳になってくると「無理してかっこつけてもね?」みたいな、多少諦めに近い考えがどこかにあって。たとえば粋チャンスが来たとして、若ければめちゃくちゃ頑張って「粋チャンス、ゲットだぜ!」と躍起になってしまうところを、この年代の人間が肩肘張らずなんとなくやったことが、すごく大人に、優しく見えることもあるのかなと。

歌広場:降ってきたチャンスに合わせてタイミングよく振舞えないと、結局は粋じゃないんですよね。それがいい意味で力の抜けた自然体ってことなんでしょうね。

浅沼:前に役者同士の打ち上げの時、何の気なしにサラダを取り分けたんですよ。僕はスーパー人見知りだから、そうしていれば人と喋らなくても手持ち無沙汰にならないじゃないですか(笑)。でも年下の役者さんたちが気を使って「そういうのは僕たちがやりますから」ってトングを取られそうになるわけですよ。そこで「せっかく俺が株を上げるチャンスなんだから、奪わないでくれる?」みたいなことを言ったら、みんな笑って僕に任せてくれて。この歳なら、自らかっこ悪い方向に振っても肩肘張ってないように見えて、それが粋に見えることもあるのかなと思いました。

歌広場:誰の目から見ても気が利いてる上に、優しさも感じるじゃないですか。そういう台詞が咄嗟に出てくるというのは、若いうちはきっと無理なんですよね。僕は今34歳なんですけど、肩の力が抜けかけてる途中くらいの年代だから、そういうかっこよさに憧れますね。まだまだ子どもなんで。

浅沼:僕だってまだ全然子どもですよ。あと10年は子どもだと思います。でも年齢を重ねていくと感じるのは、若い頃は『ワンピース』のルフィやゾロ、サンジのかっこよさばかりが目についていたのに、だんだん「あれ、ウソップもかっこいいな」みたいに、かっこいいの種類が増えていくんですよね。いろんな側面から見たかっこよさを知ったり、認められるようになっていく気がします。

歌広場:かっこよさがより細分化されていくと。それはきっと、浅沼さんがいろんなお仕事の中で戦ってこられたからこその気づきなんでしょうね。

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