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97歳にして、なお「私だって、これから大恋愛するかもしれない」と目を輝かせる瀬戸内寂聴さん。たくさんの有名人と恋愛談義に花を咲かせてきた寂聴さんだが、その中で、特に印象に残っているのが上皇后美智子さまの「恋バナ」だという。最新刊『寂聴 九十七歳の遺言』(朝日新書)から、皇居で語り合った美智子さまの結婚秘話を、特別にお届けする。
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上皇后美智子さまが皇后陛下時代、私の小説を読んで下さっていて時折、文通をしたことがあります。
美智子さまは和歌が素晴らしくお上手で、特に上皇陛下のことを詠まれた、相聞歌がとても素晴らしい。
ある時、「相聞歌をまとめたご本をお出しになったらいかがですか」と手紙に書いたことがあります。「そうしたら、国民も美智子さまのことをよりよくお慕いするでしょう」と。
しばらくして、皇居のお住まいに呼ばれました。ああいう方でも誰かに一対一で聞いてもらいたいことがあるのかなと思って、呑気に出かけたのです。
「寂聴さん、こんなに原稿があるのよ」
そんなふうにおっしゃって、ご自分の字で書いた相聞歌の原稿をたくさん見せて下さいました。
あんなにおきれいで、教養のある素敵な方なら、皇室に嫁がなかった方が幸せだったんじゃないかなどと、私たちは考えがちです。かつて美智子さまは、心労で声も出なくなったと報じられたこともありました。何で自らわざわざ苦労の多いところにお嫁に行ったのか。世間ではそんなふうに思っている人も多いことでしょう。
「寂聴さんも、そう思っているでしょう?」
その時、ふいに美智子さまがおっしゃったんです。びっくりしたけれど、仕方がないから「はい」と答えました。
「私は小さい頃からずっと優等生でした」と、美智子さまはお話を始められました。
学校の勉強もよくでき、母の言うこともよく聞いて、本当に優等生だった。学生時代から勉強一途で、ボーイフレンドなど一人もいたこともなかった。「全く恋愛の経験がなかった」とおっしゃるんです。