俺自身でいえば、プロレスの世界に入って過敏なほどの潔癖症は克服したけれど、今でも誰よりもキレイ好きだよね。スケジュールや物の定位置だとか、決め事が好き。ただ、女房も娘も大雑把だからな。自宅でも、「ここにあったハサミはどこにやった!?」なんて、一騒動起きるのはしょっちゅうだよ。こんな感じだから、最近は小脳梗塞を起こしたせいか、そのあたりの注意力が散漫になるときがあって、戸惑うよ。

 二人には、なんでも「リハビリだから!」って言われるけれど、掃除や洗濯に食事の用意だとか、相撲の下っ端のころに覚えたことは、全然苦にならない。今も洗濯から干して畳むところまでやってるからね(笑)。洗濯物が溜まってると嫌なんだよ。出したらすぐに洗って干して、ピシッと畳んだ状態になっているのを見るのが心地いいんだから。

 親父はキレイ好きだったけど、農家は忙しいから、自宅の片付けまではなかなか手を回せないからね。毎日の食事も本当に一汁一菜みたいなものだったし。炊事洗濯に関しては、相撲の世界でとことん躾られた。相撲部屋って時間で動いているから。「この時間になったらこれをやる」とかね。俺も若かったし、否応なしに若手のみんなで一緒にやっていたから、苦手意識を持つことにならなくてよかったよ。

 そういば、こんなこともあった。俺がいた当時の二所ノ関部屋は、3階に十両以上の力士が住んでたんだけど、あるときその階のトイレが汚れていて。あの大鵬さんが、自分で便器を抱えて掃除してたんだよ。「別に、下っ端のときにやっていたことだから構わないよ」って。この話が関取衆に伝わって、「格の上下なく、気がついた人が掃除しよう」っていう、不思議な雰囲気になったことを覚えてる。大横綱が便所掃除してるんだから、十両以上もやるのが当たり前ってね。

 レスラーがキレイ好きか、几帳面かどうかは、試合道具が入ったバッグを見ればすぐわかる。これとは別に、「ザ・ファンクスの靴下は臭い」というのは、身内では有名な話だな(笑)。彼らは無頓着の極みだったから、同じ靴下を3日くらい履き続けて、4日目からは裏返して履いてた。その繰り返し(笑)。ただね、そういう生活態度でもNWAのチャンピオンになれたから、ジャンボが憧れちゃってね。「この業界はあまり神経質にならなくても、大雑把でも過ごしやすいんだ」って勘違いしてたな。俺の荷物? もちろん取り出す順序まで考えて自分でパッキングするよ。

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