宮原は、自身のブログで「悲しみ、苦しみ、そしてヒューマニティを表現するプログラムであり、何か心に残るものをお届けできれば」「深いプログラムを作ることができたように思います」と書いている。宮原は苦手だと感じていたというコンテンポラリーダンスの要素がある振付を見事に滑りこなし、自身の言葉通り深い味わいを氷上に描き出す。

 グランプリシリーズ開幕前の10月初旬、アレクサンドラ・トゥルソワが4回転を4本着氷したジャパンオープンの記者会見で、宮原はいつものように静かに、しかし芯の強さを感じさせる口調で次のような発言をしている。

「観て下さるすべての方が惹きつけられるような演技ができるようにしたい」

「自分の強みを見つめ直して、そこを磨いていきたいです」

 11月19日に20歳になったメドベデワは、グランプリ1戦目のスケートカナダでは5位に終わったが、2戦目のロシア杯では2位になり、底力を見せた。21歳の宮原は連戦となったグランプリ2戦目のロシア杯では4位に終わったが、1戦目の中国杯では2位になり表彰台に立っている。ファイナルで彼女達の滑りが観られないのは残念だが、大切なシーズン後半に向け、国内選手権での二人の健闘を祈りたい。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

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