石本:それぞれの心意気でできた話ですね。ただ、どこにいってもそれができるかといったらそうではないですよね。こうした成功事例を広めていくために、各サービスの運用をもっと柔軟にしていくべきだと思います。そこをがんばった人が評価される仕組みじゃないとおかしいですよね。

■準備をして高齢者になっていく時代に

── 最後にそれぞれ、読者へのメッセージをお願いします。

中島:自分の人生なので、医師にも自分の思いを伝えていいということです。半数以上の人が身近な人とそういう話し合いをしたことがないというデータもあります。身近な人と、日常のなかで話し合いをしてほしいと思います。

石本:多死社会といわれるように、いまの時代は劇的な変化があると思います。しかし死は昔から身近にあったもので、ある意味ではふつうになったとも言えます。そこに向き合いつつ、あまり背負い込みすぎず、上手に私たちのようなプロを使ってほしい。そして人生そのものに興味を持ってほしいです。

石山:私たちにとって長生きするのはもうわかっていることですから、今後は準備をして高齢者になっていく時代に変化します。高齢期は不確実なものではなく、ちゃんと予定して高齢期に入っていき、どう過ごすのかが、自分の責任になってくると思います。自分が何を大事にしているのか、何が嫌なのかという価値観を考えること、考えるだけではなく近しい人と一緒に言葉で確認し、書いてみる。これで周囲の人に伝わっていきます。それがACPにつながっているので、堅い「会議」が必要なのではと、難しく考えないでほしいです。

◯プロフィール
石本淳也さん/介護福祉士。日本介護福祉士会会長、本県介護福祉士会会長。現在は介護福祉士養成学校の非常勤講師や、講演活動、厚労省関係の各種委員などをしている。

石山麗子さん/ケアマネジャー。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻教授。2016年から厚生労働省介護支援専門官として介護保険制度改正に携わる。18年から現職。

中島朋子さん/在宅看護専門看護師、緩和ケア認定看護師。株式会社ケアーズ東久留米白十字訪問看護ステーション(東京都)所長。看護大学などで講義を担当している。

(構成/編集部) 

※週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2020年版』から