日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「妊娠中のインフルエンザの予防接種」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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例年よりも一足早く、流行が始まってしまったインフルエンザ。9月に入り、多くの都道府県でインフルエンザによる学級閉鎖・学年閉鎖が相次ぎました。「インフルエンザワクチンの予防接種を受ける前に、インフルエンザにかかってしまった……」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
流行の目安となるのが、1.00を上回る定点報告数(全国約5,000の医療機関で1週間に受診した1医療機関当たりの患者数)です。厚生労働省の報告によると、10月28日から11月3日までの間に、なんと15の都道県で「流行」を迎えたとのこと。例年と比較すると、2カ月も早くインフルエンザの流行が始まっているのです。
その要因のひとつとして考えられるのは、日本の気候の変化です。熱帯や亜熱帯では一年を通してインフルエンザが流行していますが、日本も冬だけでなく夏にもインフルエンザが流行するような気候に変化してきている可能性が指摘されています。グローバル化も要因の一つでしょう。例年4月から9月にかけてインフルエンザが流行している南半球や、年中流行している熱帯や亜熱帯と日本の人の往来は、来年のオリンピックを考慮するとますます盛んになると考えられます。
アメリカ食品医薬品局(FDA)のゴットリーブ長官によると、「FDAが承認したインフルエンザを治療する抗インフルエンザ薬はいくつかあるが、インフルエンザの予防接種の代わりにあるものはない」といいます。
実は、妊婦さんにとってもインフルエンザの予防接種は最善の予防法となります。今回は、妊娠中のインフルエンザの予防接種の重要性についてお話したいと思います。